マーケティングという言葉が存在する前から、世界中で人々を繋いでいた「口コミ」。さまざまなマーケティング手法が繰り広げられる中、常に話題になるのはなぜか。それは人間の本能だから。ではどのように口コミを活用するのか。
この記事は、洋書配信サービス「エグゼクティブブックサマリー」から記事提供を受け、抜粋を掲載したものです。サービスを運営するストラテジィエレメントのコンサルタント、鬼塚俊宏氏が中心となり、独自の視点で解説します。
この要約書から学べること
人は自分が買った商品を、友人や家族、同僚などに薦めたがります。実際、自分の好きな物を他人に紹介するという行為は、本能的なものです。賢い企業はこの自然な性質をうまく使って多くのビジネスを獲得し、売り上げを伸ばすことができます。本書では、マーケティングの権威であるジョン・ヤンツが、期待の成果を上げる事のできる紹介システムを作る方法を教えてくれています。
ヤンツのアイディアを使えば、マーケティングに高い予算を充てることなく製品やサービスを売ることができます。実用的な本書を、小規模ビジネスのオーナーや起業家、個人開業者や専門職組合および、将来のビジネスや専門家の雇用、そして利益のために口コミをうまく活用したい商業団体または職業団体にお薦めします。そして、この本を面白いと思ったら、友人にも薦めて下さい。
「口コミ」は最も古くから存在するマーケティングの手法の1つでしょう。いや、マーケティングという言葉が存在する以前に、全世界中においてあらゆる人々が発する「うわさ」は人伝てに繋がっていく摩可不思議なものであり、それが「口コミ」という名前に代わり、ひとつのマーケティングとして確立されたのだと思います。
しかも、この「口コミ」というマルチロールといってもよい手法は、それこそ、ラーメン屋から住宅販売まで、ありとあらゆる商品やサービス、ビジネス形態においても有効であることはいうまでもありません。さらに、現代広く普及しているソーシャルメディアが「口コミ」の伝達力を加速させ、また世界中に広げることに一躍を担っています。
ともあれ、逆に、悪い噂が立てばそれが一瞬にして蔓延してしまうことにもなりますし、その話が本来持つべき本質を外れ、独り歩きしてしまうという危険性を持っているのもまた、「口コミ」の恐ろしさともいえるでしょう。
では、どうして「口コミ」というマーケティングが成り立ってしまうのでしょうか?
この書においては、この「口コミ」がどのようにして発生し、それがどのように広がっていくのか?それを分析した中で、この手法を使うことにどれくらいのメリットがあるのか?また効果的な使い方についての説明が詳しくなされています。
いまひとつ、この「口コミ」によるマーケティングを実践されている方もそうでない方も、改めて見なおしてみると、その考え方をもう一度学べるのではないでしょうか?
フレッシュブックス社という、労働時間を追跡し、請求書を作成するカナダのオンラインサービス会社があります。この会社の創設者であるマイク・マクダーメントは最近、会社のブログに自分がどれだけトリスケットシリーズのクラッカーが好きかと、そのクラッカーの新しいフレーバーについて書き込みをしました。この書き込みに対し、あるフレッシュブックス社の顧客から、そのような書き込みはしないで欲しいという苦情が寄せられました。
その顧客はフィジーに住んでおり、フィジーではトリスケットは手に入らないからです。苦情のコメントには、「私は今すぐ粗びきコショウとオリーブオイル味のトリスケットが食べたくて仕方ありません。このような無責任な書き込みを行ったフレッシュブックス社への登録は解除しようかと真剣に考えています。もっと思いやりを持ってください」と書かれていました。
この苦情を書いた人物はジョナサンといいました。ジョナサンからのコメントを見たフレッシュブックス社の社員は、すぐに粗びきコショウとオリーブオイル味のトリスケットを数箱購入し、フィジーにいるジョナサンの元へ送りました。
まさかトリスケットが8千マイルもの距離を超えて送られてくるとは思っていなかったジョナサンは、すぐさま自分のブログを開き、フレッシュブックス社が自分のためにしてくれた素晴らしい行いについて書き込みをしました。
このような小さな種から、沢山の口コミが育つのです。フレッシュブックス社はジョナサンの機嫌を取るためや、ブログに好ましい記事を書いてもらうためにトリスケットを送ったのではありません。ジョナサンのコメントを読んだ社員は、ただ自分の顧客に何か素敵なことをしてあげたいと思っただけです。
彼らの利他的な行動により、インターネット上ですぐさまフレッシュブックス社を称賛する話が広がりました。
1人の顧客を喜ばせるためにトリスケットをフィジーに送るという考えは、全ての顧客に素晴らしい経験をしてもらうことに心を砕いているフレッシュブックス社にとってはとても自然なことです。そして、それは確実に自社を推薦してもらう確かな方程式であり、会社の「推薦してもらう力」を強力にする素晴らしい方法なのです。
小さな顧客の小さな苦情をいかに解決するか?
それを行っている企業についてのエピソードが書かれています。この企業は、苦情を解決することで逆に顧客にファンになってもらうことの重要性をしっかりと理解をしているのです。それがなぜか? それが次の項目に書かれています。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授