「接するのがお客さんだということは、リアルもWebも変わらない」。3つのソーシャルメディアで合計100万の“ファン”を持つ「無印良品」公式アカウントを支えるのは、たった1人の社員だ。
Facebookで78万人、Twitterで18万人、mixiで4万人――合計100万人の“ファン”を持つ「無印良品」公式アカウントを運営するのは、たった1人の社員だ。良品計画の風間公太さん(WEB事業部コミュニティ担当)。普段は他の仕事も兼務し、ソーシャルメディア運用に費やす時間は「1日1時間ほど」だという。
「シーツ、タオルケット、枕カバーを、汗を吸いやすいタオル素材でまとめて、心地よく眠る。体の熱を吸収するジェルシートをシーツの下に敷く。そんな素材や機能性に優れた寝具、あります」――。
風間さんが同社のFacebookアカウントでこうつぶやくと、1000件以上の「いいね!」が付く。「Facebookで商品を紹介した翌日、その商品の売り上げが前日比で1.5倍になることもある」という。「かかっているコストはわたしの人件費ぐらい。ビジネス面でも貢献できていると思う」
普段はネットを使ったキャンペーンの企画や運営などを手掛けている風間さん。「うちは商品数が多いので、店舗に来てもらっても発見されにくい商品も多い。ただ、知ってさえもらえればお客さんに共感してもらえるんじゃないか」――そう考え、3つのソーシャルメディアに“おすすめ”の商品を日々投稿しているという。
同社がソーシャルメディアの公式利用を始めたのは2009年のこと。まずTwitterで公式アカウントを開設し、2010年にはFacebookページ、2011年にはmixiページをオープン。これら3つのアカウントを開設したのも風間さんだ。
風間さんは「劇団四季」で広報担当を務めたのち、2007年に良品計画に中途入社。ECサイト「無印良品ネットストア」の運営やブランディングを担当する中、売り上げ増加に向けて1つの悩みを抱えていたという。
「無印良品は商品数がとても多く、テレビCMやチラシ、メールマガジンなどに載せられるものは限られてしまう。売らなくてはいけない商品もある一方で、文房具など単価が安くてもユニークな商品も多い。それらをなんとか紹介できないかと思っていた」
2009年当時、Twitte上で公式アカウントを開設している企業はそう多くはなかったものの「まずはチャレンジしてみようと思った」。同社では2000年ごろからユーザー参加型サイト「モノづくりコミュニティー」を運営していた経緯もあり、Twitter進出へのハードルは低かったという。「上司に提案するとすぐ『よし、やってみろ』ということになった」
無印良品が扱う商品は衣料品から家具、家電までさまざまだ。だが風間さんがソーシャルメディア上でユーザーに紹介するのは、小物や食品など数百〜数千円程度で買える商品がほとんど。「5万円のソファーをおすすめしてもなかなか売れない。1000円前後のものがちょうどいい」と風間さん。こうして紹介した商品が、店舗の売り上げ向上につながるケースも多いという。
ソーシャルメディア上でユーザーの支持を得るコツは「言い回しなどのテクニックも多少はあるかもしれないが、コンテンツが最重要」と風間さん。「店舗では目立ちにくい商品でも、ユーザーに発見さえしてもらえば共感してもらえるんじゃないかと思って投稿している。大事なのは、ユーザーにとって今何が重要なのかを知り、そこに寄り添うこと」
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明治学院大学 経済学部准教授