障がいは強みになる――先天性骨形成不全症で幼少時より車いす生活を送ってきた垣内さんはそう気が付いてから、ありがとうを言う側から言われる側になった。
最近、バリアフリーという言葉をよく耳にするようになりました。しかし私たち健常者の多くは障がい者の不便さを実感を持って理解できないため、まだまだ社会のバリアフリー化が進んでいるとは言えません。
今回は「ミライロ」という会社を学生時代に立ち上げた少し個性的な青年をご紹介しましょう。「バリアバリューな世界を作りたい」という事業方針を持つミライロの代表取締役社長の垣内俊哉さん(以下垣内さん)は、先天性の骨形成不全症で、幼稚園のころから現在まで、車イスで生活しています。通常であればハンディと思われる境遇を強みにして、オンリーワンの価値を持つビジネスを展開している垣内さんとはどのような人物なのでしょうか。
垣内さんは長い間、「障がいは無い方がいい」と考えて生きてきました。10数回も手術をし人生の5分の1を病院で暮らしたので、他の子どもたちのように運動会などの学校行事に参加できなかったからです。小学生のとき垣内さんが書いた川柳に、その気持ちが表れています。
歩きたい。いつかみんなと走りたい
中学生時代には、まさにバリアを感じる出来事を経験します。
それは給食当番のときでした。垣内さんは当番をサボって、友人たちと掃除のホウキをバット代わりに野球をして遊んでいました。一緒に遊んでいた友人たちは、先生からこっぴどく叱られました。しかし垣内さんは叱られず、「トシ君は障がいがあるから、給食当番はやらなくてもいいよ」とまで言われたのです。
そのときまで「自分は歩けないだけ、車いすに乗っているだけ」だと思っていた垣内さんは、「障がいがあるから」という言葉に、障がい者と健常者の壁を突きつけられた思いがしたそうです。そのことをきっかけに、障がい者と言われることに嫌悪感を持ち、歩けないことに苛立ちを感じるようになったと垣内さんは言います。
高校1年の春、その思いは極限に達します。進学した高校の校舎にはエレベータなどはなく、車いすを運んでもらわなければ2階にある教室に行くことができません。いつも誰かの顔色を伺って車いすを運んでもらわなければいけないことや、自力で移動するときに四つん這いになって階段を這い上がる姿を女の子に見られること、それらのすべてが垣内さんを自己嫌悪に陥れました。そこでなんとか歩けるようになろうと、学校を1年間休学して手術を受けることにしました。
しかし残念ながら、歩けるようになりませんでした。
8時間にも及ぶ手術を受けリハビリに励む垣内さんがある日主治医から知らされたのは、「治らない」という事実でした。一生車いすで過ごすことを想像し、死のうとまで思いつめた垣内さん。しかし幸か不幸か、ギプスでがちがちに巻かれて身体の自由が効かなかったため、自力で死ぬこともできず、ただ泣くしかなかったそうです。
親との約束で大学には進学しましたが、大学生活はあまり面白くはなかったそうです。そこであまり学校には行かず、学内施設に入居している会社で働くようになりました。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授