自社の利益追求だけでは駄目、日本の優先課題に連携せよ 日本マイクロソフト・樋口社長2013年新春特集「負けない力」(2/3 ページ)

» 2013年01月22日 08時00分 公開
[聞き手:伏見学,ITmedia]

品質管理の徹底

――日本マイクロソフトが他社に負けない力についてお伺いします。まずは、組織的な強みを教えてください。

 マイクロソフト日本法人の社長を務めて間もなく5年になります。その間、日本に根付き、日本の顧客に貢献することを目指し、社名も日本マイクロソフトに変えました。単に日本市場で製品を売るという営業所的な機能だけではなくて、サポート体制や営業支援体制を整え、トラブルが発生した際の有事の対応など、きちんと日本の顧客に誠意を持って向き合えるマインドと体制を築いてきました。

 いくらトラブルが起ころうとも顧客から逃げずに最後まで責任を持ってやる。時間はかかりましたが、多くの顧客にも認めてもらいつつあります。それが会社の組織や文化的な強みになっていると感じています。

――製品やサービスについてはいかがでしょうか。

 マイクロソフトというと、世間ではWindowsというOSのイメージがありますが、Windows ServerやSQL Server、Dynamics、セキュリティソリューションなど、非常に堅牢でエンタープライズ利用にも耐え得る製品群が揃っています。また、それぞれの製品がシームレスにつながっています。業務ごとにアプリケーションを立ち上げることなく、シームレスなワークスタイルを実現できることが強みといえるでしょう。

――社長に就任してからさまざまな組織改革に取り組んできたと聞いています。手ごたえを感じていますか。

 最初に取り組んだのは「品質」に関する課題です。品質というのは、製品自体の品質から、製品を使ってシステム構築した後のシステム全体の品質、システム運用の過程でトラブルが起きたときの対応の品質までと、幅広い部分を指します。そこで、品質全体に責任を持つCQO(チーフ・クオリティー・オフィサー)を設置し、品質レベルの改善に取り組んできました。

 日本の顧客は品質に対して大変厳しく、根本原因まできちんと追及したり、防止策を明確に提示したりすることは不可欠です。ほかの国ではそこまで要求する顧客はいないため、米国本社からは「なぜ日本だけそこまで取り組む必要があるのか」と言われますが、これは日本にとって重要性が高いことを説明し、本社と連携を取るような体制を作っています。

 以前は、品質の問題が発生すると、これはこの部署、これはあの部署と、たらい回しでした。顧客からすると誰に話せばいいか分からない状態でした。そこで、最後まで全責任を負うような品質担当者を据えたのです。ただ、顧客視点で考えれば当たり前のことなのです。

――組織変革をする上で、難しかったところは何ですか。

 グローバルとのコミュニケーションが大きな課題でした。例えば、国家の外交を考えた場合、他国から相手にされるためには、その国のオペレーションをしっかりやっていないと話になりませんよね。それと同じで、日本法人も米国本社に対して、ああしてほしい、こうしてほしいと要望を出す前に、しっかりと足元を固め、実績を作った上で、対話をしてもらえる存在にならないといけませんでした。やることをやってから発言をしろということです。

 最も悪い状況は、業績が悪くなり、発言権がなくなり、さらにできることがなくなるという負のサイクルに陥ってしまうことです。社長を務めてから、これをひっくり返さなければならない状況にあり、それが大変厳しかったです。この改善に1、2年費やした後は、正のサイクルに入ってきているかなと実感しています。

 ベンチャーで始まり、その後の高成長期は、あまり本社との連携を意識せずに成長できるフェーズでした。現在では、日本法人も安定期、成熟期に入り、グローバルマネジメントの手法や本社との戦略的連携が重視されるなど、1980〜90年代とは求められることが異なるのです。

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