――樋口社長自身について伺います。経営者としての強みや、ほかの経営者と比べて勝る点はどこですか。
あれをやれ、これをやれと、トップダウンで言うよりも、社員と一緒になって物事に取り組んでいくタイプだと思っています。ダイエーの経営再生をしていたときも、そうした気持ちで腕まくりしてやっていましたから。
ただし、経営といっても、現在は外資系の日本法人なので、バランス・スコアカード(BSC)は関係なく、組合も株主総会もないので、経営のスコープはかなり異なりますけどね。
――社員と一緒に取り組んだ、具体的なエピソードはありますか。
案件獲得やトラブル対応などにおいて、重要な場面では同行することはいとわないです。例えば、顧客に導入したシステムが障害を起こしたり、パフォーマンスが低下したりした際、社長が出て行って謝罪しないと収まりがつかないケースもあります。そうしたことを社員が社長に言いにくい環境であってはならないと思い、初期のころから「一緒に顧客のところへ行こう」と私の方から言っていました。
また、システム改修を必要とする場合、こちらの方から「いくらコストがかかってもいいからやりなさい」と言わないと、担当者は苦しいままです。トップが財政を工面して、顧客に飛び込んで行き、最後まで責任を持つと言うと、チームは燃え上がります。最後までやり遂げ、すべて解決したときには、顧客や社員との信頼関係が築けるのです。
無責任な経営者だと、顧客のもとへも行かないし、放ったらかしで、現場担当者はニッチもサッチもいかない状態になります。その結果、会社を辞めてしまい、顧客からは担当者がどんどん入れ替わると指摘されてしまいます。
――社員とコミュニケーションを取る上で、樋口社長が工夫していることは何ですか。
話しやすい雰囲気を作るべきだと考えています。例えば、売り上げ予想の下回りなど耳の痛くなるような話は誰も聞きたくないわけですが、そのままにしておくと、自然と悪い情報がトップに上がらなくなるなってしまいます。そうしたことがないように、コミュニケーションをどんどん取れるような環境が重要だと感じています。
――樋口社長個人としての今年の抱負を教えてください。
これまでは、「自分は健康のままで身体を壊すことはないだろう」と思い込み、がむしゃらに働いてきましたが、最近になってようやくワークライフバランスの大切さも分かってきました(笑)。バランスをとりながら働くことを心掛けないと、今後も持続的に活躍させていただくこともできないし、人材育成して後進に引き継いでいくこともできなくなります。
もう1つは、先に述べたように、外資系の日本法人だと経営のスコープが狭くなりがちです。特にソフトウェア企業の場合は、製品開発時に膨大な固定コストがかかるため、トップライン(売上高)しか見ない傾向にあります。日本系企業の経営を経験した者から言うと、非常に単純なビジネスモデルであるわけです。日本全体のアジェンダを、身を持って理解できるようなリーダーになるためには、日本マイクロソフトのオペレーションに加えて、もう少し経営視点の幅を広げていければと思います。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授