ビジネスのデジタル化で成長を牽引する情報システム部門へITmedia エグゼクティブ CIO インタビュー 2013(2/2 ページ)

» 2013年03月27日 08時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]
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 2番目の「ビジネスのデジタル化」は、デジタルを活用して、顧客にとって会社や商品/サービスの真の価値を問い直す経営変革だ。

 米国企業では「CDO」(最高デジタル責任者)という役職も登場し始めているらしいが、GEキャピタルでは、Webやスマートデバイス、ソーシャルメディアなど、最新のテクノロジーを活用して顧客への価値を高める役割は、CIOや情報システム部門が担おうとしている。従来は紙ベースや電話でやり取りしていた商品/サービスをWebベースやスマートデバイスで提供できれば、顧客はより使いやすく、より生産性が高められる。そんな顧客基点の仕組みもテクノロジーがあれば構築できるはずだ。

 「GEは顧客のビジネスを強くするパートナーになりたいと考えている。顧客が課題を解決し、成功するための技術力や金融ソリューションを提供するのがGEだ」(松本氏)

 GEは長い歴史の中で、研究開発から製造、販売に至るまで、顧客企業と同じような問題を抱え、それを解決してきた経験とノウハウがある。GEキャピタルでは、「More Than Finance」をモットーに、その知識やノウハウを「Access GE」と呼ばれる顧客向けのプログラムにまとめ、業務改善、問題解決、リーダー育成、組織管理、海外展開、インテグレーション、財務手法など、あらゆる経営上の課題に対して金融を超えたソリューションを提供している。

 「今後は、Access GEでもITの果たす役割は大きくなるだろう」と松本氏。

企業の品格が問われる情報セキュリティやコンプライアンス

 3番目の企業コンプライアンスでも松本CIOは大きな責任を負う。企業は法令を遵守するだけでなく、社会的な規範や倫理を守ることも期待されている。社会が大きく揺れ動く中、企業を見る目はますます厳しくなってきている。分かりやすい例は、情報セキュリティだ。

 「今やサイバーテロの時代。日本企業は性善説で考えているのか、顧客のデータを守るのは企業の責任、という意識が薄い」と松本氏はみる。

 情報セキュリティ対策やリスクマネジメント、コンプライアンスについては、「どこまでやれば許されるのか」といった議論に陥ることがしばしばだが、松本氏は、「情報セキュリティやコンプライアンスでは妥協しない」と一蹴する。

 「中途半端な対策では“泥棒は儲かる”と公言しているようなもの。企業の品性が問われる。GEは誠実さにおいて妥協はしない」と松本氏は話す。

人材を情報システム部門に取り戻す

 最後は、やはり「人」だ。企業のデジタル化も、情報システム部門ではその仕組みを構築する人材、会社全体ではそれを使いこなす人材が欠かせない。

 「会社の将来像や、あるべき商品やサービスを姿を考え、マーケティング部門と連携しながら、それを支えるITのロードマップを描いていくには、情報システム部門に人材を取り戻さなければならない」(松本氏)

 テクノロジーの重視は、GEのコンセンサスとなっている。これまで外部のパートナーにアウトソースしてきたものでも、大切なものは取り戻す時代だ、と松本氏は話す。

 「テクノロジーを重視するということは、顧客やパートナー、あるいは社員との新しいコミュニケーションや仕事のやり方にしっかりと取り組むということ」と話す松本氏は、いち早く社内にソーシャル・ネットワーク・ソフトウェアを紹介するなど、試行錯誤を始めている。

 「デジタル世代はTwitterやFacebookを当たり前のように使いこなす。彼らが働きたいと思ってくれる会社でなければ今後の成長は難しくなる。この変革ができなければ、10年後、20年後にその会社はない」(松本氏)

 今や市場で高い評価を得ているのは、固有のテクノロジーを自ら持つ企業だ。「GEも世界一の企業価値を目指している。ITはもっと大きな役割を果たすことができるはずだ」(松本氏)

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