コングロマリットの横ぐしにリーダーシップを持つ人材を育成―GEキャピタル松本氏ITmedia エグゼクティブ セミナーレポート(1/2 ページ)

組織の持続的な発展、そして規律ある活動には、リーダーたりうる人材が重要だとするGE。その人材に求められる資質や育成プログラムはどのようなものなのか。また、人材の活動を支えるシステムとは、どのようなものなのか。

» 2010年08月25日 12時56分 公開
[岡田靖,ITmedia]

 「組織の寿命は30年」という言葉がある。その寿命を超えて組織が長生きするためには変革を続けていなければならない、ということを意味している。持続的に変革を続け、かつ組織としての適正な管理を行い、長期間に渡って安定した成長を続けていくためには、その支えとなる人材の育成・活用が不可欠だ。GEキャピタルジャパン 執行役員CIOの松本良之氏は、第15回エグゼクティブセミナーで、『GEの人材戦略とそれを支えるIT』と題した講演を行った。

価値観を重視した人材戦略がコングロマリットを支える横ぐしに

GEキャピタルジャパン 執行役員CIOの松本良之氏

 130年以上の歴史を誇り、世界最大のコングロマリット(複合企業体)でもあるGE。多様な事業ポートフォリオを持つコングロマリットは景気変動の中でも粘り強く生き続けられる反面、あまりにも多様な事業を同一組織の中に共存させることが非常に難しいとされる。GEでは、その課題を克服する試みを続けてきた。

 「コングロマリットには、全く異なる事業分野を同じ企業の中で共存させ、1つの組織とならしめなければならない難しさがある。そのためには、全社的な横ぐしを通すことが欠かせない」(松本氏)

 その横ぐしとしてGEでは、目標やプロセス管理などによる組織運営のメカニズムや、業務最適化のための各種の手法、コンプライアンスといった組織的なメカニズム、さらに人材の育成・評価や、また社員の行動規範となる「グロースバリュー(価値観)」を活用しているという。組織の中で働く個々の人材から組織全体まで、一つの企業として統一感のある動きができるようにするというわけだ。

 人材において特に重視されているのがグロースバリュー。グロースバリューとは、これまでGEの中で企業の成長に寄与した人物を分析して導き出される資質だ。つまり、GEの成長に役立つと期待される人物像そのものである。具体的な要素は時代の変化に対応するため、数年ごとに改訂されており、2009年に定められたグロースバリューでは「外部志向」「明確な思考」「想像力」「包容力」「専門性」の5つの要素が記されている。

 そしてGEでは、このグロースバリューと業績の2つの軸で、人事評価を行う。もちろん業績とグロースバリューの両方の評価が高い人材が最良であることは言うまでもない。逆に、両方とも低い評価となる人材は、GEに合わない(ミスマッチ)とされる。

 注目すべきは、一方が高く一方が低い評価となった人材の扱いだ。価値観が高く評価されているのに業績が上がらないなら、それは人材の活用に問題があるという考えがあり、結果を出すための再チャレンジの機会を与える。一方、業績が高ければ必ずしも高く評価されるとは限らない。高い業績を上げていても、価値観の評価が低い人材は、GEにとって問題だとされている。中長期的にみれば企業の成長を阻害する危険がある人材だという考えだ。

 「業績を出している一方でバリューの低い人について、前CEOのジャック・ウェルチは“顕微鏡で見つけ出してピンセットでつまみ出せ”とまで言った。さすがに現在ではそこまでやらず、教育を施してバリュー改善を促している」(松本氏)

業績とグロースバリューによる2軸での評価
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