やりたいことを実現するには転職や独立しなければならないのか? ビジョンを実現するには企業にいたほうが大きな仕事を成し遂げられるのではないか。大企業で意気揚々としている人たちは大勢いるのだ。
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」のバックナンバーへ。
アントレプレナー=起業家は、多くのビジネスパーソンにとって、自分とは別世界のなにか遠い存在であるに違いない。特別な才能をもち、リスクを冒す勇気を兼ね備えた存在。実際、起業は生半可なことではできない。したがって私は、それを普通のビジネスパーソンに勧めることは決してしない。起業する人は、人から言われる前にとっくにそうしているはずだからだ。
では、なぜ今「起業家」なのか? それは、アントレプレナーシップ=「起業家精神」が、ごく普通のビジネスパーソンにも求められる度合いが高まったと強く感じるからだ。
入社するときは誰もが皆、希望や目的を持っていたはずだ。しかし、データは大卒の新入社員の4割弱が3年以内で会社を辞めていることを示している。残っている人間も、ただ言われたことをこなすだけの毎日を送っている人も多い。会社で働くことの利点とは、安定的な雇用以外には無いのだろうか?
やはり起業でもしなければ、自分のやりたいことはできないのだろうか?
否。私が伝えたいメッセージは、やりたいことを実現するには必ずしも転職や独立する必要はないということである。ビジョンを実現するには、企業で勤めているからこそのメリットである豊富なリソース(人、モノ、カネ、ブランド)を使い倒さない手はない。むしろ企業にいたほうが大きな仕事を成し遂げられるのではないか。それに気付き自ら意気揚々と会社を動かしている人たちは大勢いるのだ。
私自身会社勤めを経験し、また独立してからは数多くの企業で働く人たちと接し、また、縁あって多くの若手でベンチャーを起こした起業家たちの経営支援をしてきた。
企業に勤める人たちとベンチャー経営者。
彼らと間近で接してきてつくづく思うことは、「起業家」マインドが必要なのは、ベンチャー経営者だけではないということ。企業において、どんどん出世して行く人、あるいは、やらされ感なく楽しそうに仕事をしている人は、例外なく「起業家」マインドを持って自律的に働いている。
企業においても「起業家精神」の必要性は以前から指摘されてきた。しかし、では具体的にはどのようにそれを企業で働く上で発揮したらよいのか、ということについて具体的に示した書はなかったのではないだろうか。
私が組織人事コンサルタントや大学教員としての経験の中で出会ってきた、「起業家」マインドを具体的な行動に落とし込んで仕事を進める「企業人」が一体どうやっているのか、特に20代後半〜30代前半のビジネスパーソンに伝えたいことを、私のゼミの卒業生に対して手紙を送るという形式でまとめてみたのが本書だ。
具体的な例を挙げよう。
ベンチャーの登竜門として注目されているMorning Pitchは、毎週木曜日の朝7時から開催される。毎回70〜80人が参加し、4社のベンチャー経営者が次々と大手事業会社の人たちの前でプレゼンをし、質疑応答を行う。そこから、実際にビジネスが成立したり、企業からベンチャーへの出資が成立したりしている。
その運営者のひとりがトーマツ・ベンチャー・サポートの事業開発本部長の斎藤祐馬さんだ。現在30歳の斎藤さんは、監査法人トーマツに籍を置く会計士である一方、一定規模以上の会社を対象に会計監査を生業とする同社の中で、収益化が難しい起業から株式公開準備に至るステージを中心に支援する社内ベンチャーの事業化を成功に導いたビジネスパーソンでもある。最初は収益が出ないベンチャー支援ばかりをやっているわけにはいかないため、平日の業務終了後や土日にベンチャー支援を行うことでネットワークを増やし、徐々に活動の範囲を広げていく中で、メディア掲載や案件の受注が増え本格的に事業化するに至った。
世の中のビジネスパーソンは、やりたいことを仕事にできたらどんなにいいかと、思わない人はいないだろう。斎藤さんは、どうやって自分のやりたいことを通したのか?
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授