企業で働くにも「起業家」のように働くことが必要な時代ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

» 2013年10月24日 08時00分 公開
[小杉俊哉,ITmedia]
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 「いつも、関係者のインセンティブは何かを常に意識することが重要です。何かのプロジェクトに周りのメンバーに関与してもらい続けるには、貢献した以上のリターンが返ってくるような仕組みづくりが必要です。例えば、上司に対しては。業績を上げたい、組織を活性化したいというニーズにきっちりと応えられるプロジェクトを作る、その上で、リスクを説明可能な範囲内に抑えるなど工夫が必要です。事業がうまく行くように周りの方の力を借りる、その一方で関与してくださったメンバーには倍返しで御礼ができるプロジェクトを作るのがやりたいことをやる基本です。」

 また「上司をリスペクトしながら、いかに対等に話をするかが重要なんです」とも言っている。事業責任者や、2つ上の上司の視点を持つ、それは近視眼的な自分の立場から離れ、ビジネスを俯瞰し、大局的に見ることを意味する。そのような視点を持った発言や行動は、受け身でなく卑屈でもなく、堂々と相手に伍して接することができ、上司や上層部を説得しうるということだ。

「起業家」マインドを持って働く人たち(2)

 そのMorning Pitchを、斎藤さんと一緒に運営しているのが、野村証券の塩見哲志さんだ。現在28歳の彼が、会社を動かしてそのようなことを実現するのは並大抵でなかったことは容易に想像できる。実際、当初社内ではさまざまな意見があったようだ。しかし、斎藤さんらとアライアンスを組み、ネットを駆使し、マスコミを巻き込み、協力会社を募り仕組化をしていった。会社の役員たちも、今や温かい眼差しで、塩見さんの取り組みを見守っている。塩見さんは、私心からではなく、会社を発展させ、日本を活性化させようという思いを持った人と組みたいと言っている。まさに、「出る杭は打たれる 出すぎた杭は引っ張られる」を体現している。

 なぜ、自分のやりたかったことを具現化できたのか。それは、社内ではなく社外を巻き込んだことが大きい。社内外を問わず支援者たちが集まり、媒体が取り上げる理由は、塩見さんが、自分の業績を上げたり我田引水に活動したりしているわけではないからだ。「日本のためにやっている」という思いがあることだ。また「将来的にも会社を辞めるつもりは一切なく、大企業の中で大企業に集う人たちの思いを変えていきたい」「当社のような会社がリード役を務めれば、日本も変わっていくことでしょう」とも言っている。まさに大志をもっているから、多くの人を巻き込むのだ。

 ここに紹介したのはごく一部の例だが、多くの人が会社でやりたいように働き、仕事を楽しんでいるということを知ってほしい。それには、「言われたことをやるだけで終わらない」、「会社でやる意味を常に意識する」、「会社のリソースを使い倒す」、「社内外のネットワークを作る」、「自分がどうなりたいかより大切なことを持っている」など共通する考え方、行動があるのだ。

 「こんなはずじゃなかったのに……もっと活躍したいのに!」と思っている人たちがひとりでも多く、やる気に満ちて自分のやりたいことをするために毎日出社し、会社を動かすことを願っている。企業もそんな「起業家」マインドを持って自律的に働く企業人を必要としているのだ。

著者プロフィール:小杉俊哉(こすぎとしや)

1958年生まれ。早稲田大学法学部卒業後、NEC入社。マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院修士課程修了。マッキンゼー・アンド・カンパニー、ユニデン人事総務部長、アップルコンピュータ人事総務本部長を歴任後独立。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授を経て、現在、同大学SFC研究所上席所員。合同会社THS経営組織研究所 代表社員。

著書に「リーダシップ3.0〜カリスマから支援者へ」(祥伝社新書)、「30代の働き方には挑戦だけが問われる」(すばる舎)、「ラッキーをつかみ取る技術」(光文社新書)他多数。


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