カリスマによる統率は、時代に合わなくなっている。必要なのは人々の自律性を引き出す支援者だ。
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ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」のバックナンバーへ。
リーダーというと、多くの人がトップダウンで采配を振るうカリスマ的な強いリーダーのイメージを持ちがちである。しかし、現代のように過去に誰も経験していないような環境下では、経営の正解を知り、自らの意のままにリードするのは至難の業である。
リーダー1人の力で、配下の従業員の能力や成果を評価し、やる気を起こさせ、組織を率いて行く、ということができるのはオーナー系企業のトップなどを除けば極めて限られている。それよりも、現場の一人ひとりが自律的に働き、価値を提供したり提案を上げたりすること(ボトムアップ)、中間管理層が活発な議論と組織の上下左右に対して働きかけ活性化する(ミドルアウト)がなければ、組織は立ち行かないことは自明である。従ってリーダーはそのような作用が起こる環境を整え、触媒になることが必要なのである。
にもかかわらず、強いリーダーにならなければいけないという呪縛により、メンバーとのコミュニケーションに迷い、自信を失い、自ら進むべき方向を見失っている経営層、事業部長、部長などの管理層が非常に多いと、企業研修やリーダークラスとのコミュニケーションを通じて常々感じている。例えば、部下に弱みを見せてはいけないと本来の自分に仮面を被り強がって見せる上司は非常に多いが、これでは、部下との信頼関係を築くことはできない。
歴史的に見るとリーダー像は時代背景や、組織のあり方、フォロワーとの関係によって大きく変化していている。中央集権的な権力者のリーダーシップ1.0から、同じ権力者でも分権を指向した1.1の時代、調整者の1.5、そして変革者の2.0をとなった。そして現在は、支援者のリーダーシップ3.0の時代である。もちろん、その時代のすべての組織が該当する訳ではない。しかし、その時代を代表するリーダーシップが存在しているのだ。
―リーダーシップ1.0 〜1920年代まで 権力者<中央集権>(Command and Control)
―リーダーシップ1.1 1930-60年代まで 権力者<分権>(Management by Functions)
―リーダーシップ1.5 1970-80年代 調整者(Value-driven Management)
―リーダーシップ2.0 1990年代 変革者(Change Management)
―リーダーシップ3.0 2001年〜 支援者(Value Creation)
支援者としてのリーダーが必要な背景としては、かつてのように画期的な技術が次々と生まれ、それに基づき製品やサービスを作って行くようなやり方ができなくなってしまったことがある。そのような環境下、リーダーの役割は一人ひとりのメンバーと向き合い、動機付け、その潜在能力を伸ばす支援が求められる。しかも、それは社内に留まらず、社外も含めて参画意志と能力のあるものを集め、試行錯誤の中で新しい価値創造を行う必要がある。
また、リーマンショックや、わが国の東日本大震災、原子力発電所事故 が 更に、いままでとは異なるリーダー像の輪郭を明らかにしたのである。いかにして収益を上げるかというHowを知っていることよりも、地球に対して、人々に対して何をすべきかというWhatを追究することが、 組織 をサステナブルな存在にするために必要である。むしろ、収益を上げることしか頭に無いリーダーは顧客や従業員、さまざまなステークホルダーから嫌悪感さえ抱かれるのである。
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明治学院大学 経済学部准教授