いまや雇用者の4割が非正規社員。パートやアルバイトの雇用管理こそ重要なマネジメント能力。
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最近、非正規社員が話題になることが多いと思いませんか? パートやアルバイトの雇用のことで、悩んだことはないですか?
今では、日本の雇用者の4割が非正規社員です。パートや契約社員等が1人もいない事業所は、2割にすぎません。実際あなたの仕事も、パートやアルバイトはもとより、派遣や契約社員、外注や請負などの力を借りることで、成り立っているのではないでしょうか?
会社が非正規社員を採用するメリットは、従来はコスト面(人件費)にありました。正社員1人分のコストで、3人、4人の非正規社員を雇用することで、会社は人件費リスクを分散することが可能でした。しかし、最低賃金の上昇や採用コストの高騰、今後予定される社会保険の適用範囲の拡大などにより、状況は一変してきています。
さらに、増え続ける労使紛争の波は、非正規社員にも例外ではありません。パートの異動をめぐるトラブルから、150万円もの金額を請求された。契約社員の雇止めがトラブルに発展し、引き続き雇用せざるを得なくなった。たった1人のアルバイトの解雇問題で、廃業寸前の危機に追い込まれた。こんな例は、決して珍しくないのです。
わたしはかつて自ら派遣や契約社員、アルバイトなどの非正規社員に身を置き、逆に管理職として非正規社員の雇用管理も経験しました。それらの現場で培った目線と問題意識をもとに、非正規雇用に詳しい社労士として活動して10年になります。
わたしが伝えたいのは「非正規社員を雇用することのリスクは、あなたが思っている以上に大きい」ということです。驚くほど多くの人が、たかがパート、たかが契約社員の問題だと思い込んでいるため、会社がリスクを顕在化させる場面があとを絶ちません。
パートは、雇用契約さえ交わせば、特に採用手続きは不要。契約社員は、期間満了になれば当然に退職となる。アルバイトは、クレームが相次ぐようなら解雇できる。派遣社員は、あくまで派遣会社の人間だから、当社とトラブルになることはない。外注契約を結んでいる請負さんから、労使交渉を要求されることはありえない。
答えは、いずれも「NO」です。多くの会社では、今まで正社員中心の労務管理や人事制度が念頭に置かれてきたため、非正規社員の抱える問題への免疫がまったくといってよいほどありません。事実上、ノーガードに近い状況で、雇用リスクと向き合っています。しかも、期間雇用を続けていたり、転職経験が豊富な人は、正社員以上に雇用契約に対する意識が高いため、毅然と会社に立ち向かってくるケースが多いのです。
「トラブルを防ぐ! パート・アルバイト雇用の法律Q&A」では、実際にわたしが関わった事例の中から、典型的なテーマに絞って30のQ&Aにまとめました。従業員数1〜150人規模の会社(部門)で起こりがちなトラブルとその対応方法を簡潔に整理しています。ここでは、その中から3つのテーマに絞って紹介します。
1、売上が50%も下がったので、契約社員を期間満了で雇止めしたい
長引く円高・デフレ不況による経営の悪化により、多くの会社が人件費の削減に踏み切らざるを得なくなっています。今後の消費増税や世界不況などにより、さらに深刻な状況に陥るケースも増えてくるでしょう。そんなとき、まず最初に着手するのが、契約社員などの非正規社員の雇止めです。
ところが、実際には契約期間の満了時といえども、自由に雇止めできないケースも多いのです。基本的には、(1)実態がかぎりなく正社員に近い場合、(2)契約更新への従業員の期待が高い場合の2つ。仕事の内容や勤務形態、採用基準や労働時間、会社の言動や契約更新の手続きなどから、総合的に判断することになります。
雇止めにあたっては、説明会の開催、相談窓口の設置、上司との個別面談などを行い、会社ができるかぎりの努力を尽くすことが求められます。最近の裁判例でも、こうした努力が実った場合には、会社が勝訴しているケースがあります。この雇止めの法理については、2012年の労働契約法の改正で法定化されたため、今後は十分な対策を講じていくことが大切です。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授