叱る、断る、褒める、あなたは上手にできますか?
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」のバックナンバーへ。
活発で、自由な意見交換ができ、皆がやる気があり、パフォーマンスも高い、経営者のすべてがそんな職場を望んでいると思います。あるいはお客さんとの関係、もっといえば、根底のところで自分を支えてくれる家族や友人との関係、それらがうまくいっている人は自分を肯定し、新しいチェレンジすら楽しみながら向かっていくことができます。それらのすべての鍵を握っているもの、それは対人はもとより、自分自身との会話も含む、コミュニケーションではないでしょうか?
それなのに、相手のために良かれと思って叱ったら、相手が傷ついてしまった。お客さんが怒ってしまった。あるいは部下のあの一言でばかにされたと腹が立つ。同じ褒め言葉でもセクハラと取られる人とそうでない人がいるのはどうしてでしょうか?
人が傷ついたり、あるいはそのつもりがないのに相手を傷つけたりしてしまうときには必ず起こっていることがあります。それはわれわれ人間が持つ脳の中の思考レベルを正しく理解すると驚くほど明快になります。
ニューロ・ロジカルレベルといわれる脳の中の思考レベルは6つあり、下から、環境、行動、スキル、ビリーフ(思い込みも含む)、アイデンティティー(ID、自分の本質・人格を認識するレベル)そしてビジョンです。ニューロというのは、それぞれどのレベルを脳が認識するかで活性化される神経が違うからです。そしてこのレベルをはきちがえると誤解が生じ、会話が食い違うだけでなく、例えば目の前の問題の解決すらおぼつかなくなるのです。
ひとつ例を挙げましょう。ある店舗で商品が売れないとしましょう。環境のレベルに問題があるときは、立地条件に問題がある、売るタイミングがあっていないなど環境に関した問題にメスを入れる必要があります。行動のレベルであれば、マニュアルが分かっていないなど具体的に取るべき行動が正しく取られていない可能性が大です。スキルのレベルなら、交渉力、販売ノウハウや戦略をトレーニングすればいいわけです。
ところがビリーフのレベルとなると、販売員が「この商品は売れない、他社の製品のほうが本当はいい」などと信じている、これでは売れません。IDのレベルでは販売員が「自分はいい販売員ではない、自分は向いていない」と思っているかもしれません。ビジョンのレベルとなると、その商品を通して人々の生活が楽しくなるなど、自分の外に対して何らかの貢献ができるというレベルで、ここまでしっかりつなげられている人はいいのです。しかしその反面、この商品は実は環境破壊をしているなどというのがあれば、成功は難しくなります。
人間の脳は無意識でも会話の中で、どのレベルについて今話されているかを認識し、それに対して反応するのですが、ここで、誤解を招く大きなポイントがあります。
目に見えるレベルと見えないレベルの混同です。6つのレベルで実際に目に見えるのは行動のレベルまでです。(スキルは行動に落として初めて見えます)。ところが私たちは見えたことをそのまま伝えればいいのに、それを勝手に目に見えない部分で伝えてしまうのです。そして人が傷つくときには、この目に見えるレベルが必ずIDのレベルにつなげられているのです。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授