組織の階層で上になるほど競争も激化してくる。優秀な人材だからこそマネジャーとして選抜れているわけで、そんな同僚たちに何をもって差を付け、自らの競争優位を確立するのか。考えてみる価値がある。
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」のバックナンバーへ。
わたしは現役時代、幾つも会社を変わってキャリア開発をしてきました。37才の時に小さな外資の社長を任されて、それから幾つもの会社で経営職をこなしました。経営職というのは――特に社長の仕事というのは面白いものです。責任やプレッシャーももちろんありますが、それさえもそのポジションにたどり着かないと味わえません。本コラムを読んでいる皆さんはすでにマネジャー・レベルの方が多いと思いますが、是非精進してエグゼクティブ、そしてCEOへの階梯を登って行ってもらいたいと思います。
組織の階層で上の方に来れば来るほど、競争もまた激甚となってきます。何しろ、優秀な人材だからこそマネジャーとして選抜そして任命されているわけですから。そんな同僚マネジャーたちと「何をもって差を付けていくのか」つまり「自らの競争優位」は何になるのか、考えてみる価値があります。
マネジャーレベルの人たちが一応保持している能力が2つあります。
これら2つの能力がなければ、預かったチームを指揮、鼓舞して結果を出すことはできないので、いわば「持ってて当然」の能力です。ですから、皆が持っているこれらの能力分野でさらに抜け出そうとするのは効率が悪いし、至難の技です。
ところが皆さんのレベルになってもばらつきがあるというか、開発が進んでいないのが「戦略力」なんです。「戦略力」とは経営戦略を立てる力、そしてそれを実践できる力です。
それでは、全社戦略や部門戦略の立て方とは、一体どうすればいいのでしょうか。その方法を今度の新著『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(山田修、ぱる出版)で書きました。同書で展開した「戦略カードとシナリオ・ライティング」技法については、出版記念セミナーでも具体的にお話しします。セミナーの案内については、わたしのサイトを覗いて見てください。
世の中には多くの「経営戦略本」が溢れています。しかし、それらをひも解いてみても、ストレートに「経営戦略の立て方」を指南してくれている書はありません。戦略を立てる際に気をつけること、つまりTIPS(役に立つコツ)が種々述べられているくらいです。
「戦略を立てるためにはコンセプトが重要だ」などとも言われますが、それではそのコンセプトはどうすればいいのだというと、「それは自分で考えるしかない」などと述べられていました。
コンセプトの達人や、戦略センスに格段に富んでいなくても、ステップを踏んでいけばその能力を獲得できる、つまり体系立てた「戦略立案技法」が学習できれば、マネジャー・レベルの皆さんの能力開発に大きく貢献するはずです。それが「戦略カードとシナリオ・ライティング」技法です。
戦略を立てるには次のようなインナー・ステップがあります。
1、自社内外の事象を概観し、重要要素を抽出する。
2、対応策を幾つも考え、それぞれの実現蓋然性を査定する。
3、選抜したアクション・プランを実践になじむように構成する。
4、伝えられるように言語化する。
以上の作業要素は基本的には全て自分の頭の中に存在します。実際、経営戦略は自己の頭の中からしか生まれてきません。しかしそれらの要素は頭の中では「思索の断片」の形で、未整理なものとして存在しています。それらに対して上記のような操作を加えようとすると、通常は頭の中だけではとても行えるものではありません。
そこで、何らかの思考ツールが必要となります。わたしが開発した「戦略カード」を使って、次の5つのステップを走らせます。
それぞれのステップでは、「カード出し」と「カード選び」、「選択理由の裏書き」を繰り返していきます。するとちいさな「ミニ・シナリオ」が紡ぎ出され、全体としては「シナリオ・ツリー」が形成されます。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授