組織マネジメントの本質は、意識の共有によって組織内の人間が同じ色眼鏡をかけていると信じられること気鋭の経営者に聞く、組織マネジメントの流儀(1/2 ページ)

社員は自分の夢を実現するための単なる道具だった。しかし本当に夢がかなえられたのは仲間としてコミュニケーションができるようになってから。

» 2015年01月21日 08時00分 公開
[聞き手:中土井僚(オーセンティックワークス)、文:牧田真富果,ITmedia]

 オウケイウェイヴは日本最大級のQ&Aサイトを運営する会社だ。代表取締役社長の兼元謙任氏は壮絶ないじめを受けた経験、2年弱のホームレスを経て、オウケイウェイヴを創業。兼元氏のどのような思いによってオウケイウェイヴは作られたのか。彼の経験によって導き出された独自の組織マネジメントの流儀に迫る。

インターネット上に助け合いの場があれば、苦しんでいる人を救えるかもしれない

中土井:オウケイウェイヴはQ&Aサイトを運営している会社として知られています。どのような経緯で創業し、具体的にどのようなことをしているのですか?

兼元謙任氏

兼元:オウケイウェイヴは今から16年前に創業した会社です。インターネット上で質問と回答のやり取りを仲介するQ&Aサイトを運営しています。社名のオウケイウェイヴの “OK” は「Oshiete」「Kotaeru」の略です。企業、個人、専門家にマッチングの場を提供することで、価値を生み出し、月額での利用料や、広告費で運営しています。

 きっかけは「インターネット上に助け合いの場を作りたい」という私の思いです。私には国籍への偏見によるいじめの経験があり、苦しい子ども時代を生きてきました。同じように何かで苦しんでいる人の救いになればという思いから作ったサービスです。

 私は韓国籍だったので(※現在は帰化)、小学生のときから壮絶ないじめや不当な扱いを受け続けてきました。死にたいと思ったことも多々あります。それでもなんとか生きながらえ、インターネットに出会い、考え付いたのがオープンな助け合いの場の、Q&Aサイトでした。

 このサービスが実現できたなら、本当に困っている人を救えるかもしれないと考えました。当時は、ここで助け合いが起きないんだったら、生きていてもしょうがないとまで考えていました。しかし、まだきちんと機能しているQ&Aサイトがほとんどない時代のことでしたから、事業内容を伝えても、インターネット上で見ず知らずの人同士で質問と回答が成り立つことなんてありえないと言われ続けたのを覚えています。

国籍への偏見による壮絶ないじめ体験

中土井:兼元さん自身の壮絶な体験、生きるか死ぬかのある意味ぎりぎりの体験によって生まれたサービスなのですね。

兼元:韓国籍という理由で、小学校5年生のときトイレに無理やり頭を突っ込まれたことがありました。昨日までは、キャッチボールをして一緒に遊んでいた友達だったのに、私が韓国籍だということを知っただけで、突然、私をいじめ始めたんです。鬼のような形相でけりを入れられて、助けてくれる人はいませんでした。

 大学受験のときには、先生に「お前は韓国籍なんだから、願書なんか出しても無駄だ」と言われたこともあります。学生時代に付き合っていた彼女は、私の国籍を理由に、両親に転校させられ、引き離されてしまいました。小学校、中学校、高校時代を通し、何度も死にたいと思うほどの経験をしてきました。体が丈夫ではなかったので、病気になったこともあります。社会に出てからは妻から離婚を突き付けられたり2年弱ホームレス生活を送ったりもして、生きていてもしょうがないと思っていた時期もありました。そういった中で、出会ったのがインターネットでした。これがあったら、以前の私のように苦しい思いをしている人を助けてあげられるかもしれないと考え、Q&Aサイトを作ろうと思い立ちました。

夢を実現するための単なる道具から、仲間へと変わった組織観

中土井:だんだんと組織が大きくなるにつれて、人や組織に対する考えはどのように変わりましたか。

兼元:創業当時は、自分が思い描いた夢を実現するための力、道具のようなものとして組織をとらえていたように思います。社員ときちんとコミュニケーションを取ることもなく、私が言った通りのことをやってくれという感じでした。

 今は仲間としてとらえるようになり、考え方は大きく変わりました。社員全員とコミュニケーションを取るようになって初めて、自分の考えていることが偏っていたと気付かされました。自分が重要視しているからといって、みんなも同じようにとらえているわけではありません。

中土井:コミュニケーションが重要だと気付いたきっかけは何ですか。

兼元:ある会社から買収の話を持ち掛けられたときに、社員に相談をすることなく、私の独断で断ったことがありました。そのことを知って辞めた社員がいました。会社にとって重要なことは、みんなで議論してから決定しないといけないんだと気付きました。それからは積極的に社員みんなにヒアリングをするようになりました。それまで人事のことは副社長に任せていたのですが、自ら面接をするようにもなりました。会社のミッションの共有も意識的に行い、みんなに読み上げてもらったりしています。

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