欧州経済が低迷する中、ドイツは欧州全体からみればその堅実さが注目される。
また、ドイツと日本は産業構成が似ている。たとえば、製造業比率は、ドイツが24%、日本が21%だ(2012年)。加えて、日本とドイツはその国土構成、経済水準、産業構成、人口動態など他国に比しても非常に似ている。(図B参照)
2009〜2013年の実質GDP成長率では、ドイツが2.2%と日本の1.8%より高く、その堅調ぶりを伺わせる。
企業の収益性で比較すると、過去10年の営業利益率の改善も目を見張るものがある。2001年における上場企業全体における営業利益率は、日本が5.6%、ドイツが1.5%であったが、2010年には、日本が6.4%、ドイツが6.8%であり、日独が逆転している。なお、2012年におけるに日本の上場企業の営業利益率は5.1%である。
さらに、よく言われることであるが、「堅実で働き者、時間を守りまじめに働く国民性」であるドイツはその基本的な価値観が日本と似ており、ドイツにおける経営手法が日本に馴染む可能性は高い。
ここでは現状のドイツ企業の強さの理由について考察したい。ドイツ企業の強さを特徴付けているのは製造業への回帰と大企業・中小企業の共存、そしてその国際性であろう。
ドイツは世界でも珍しく製造業へ回帰している国である。図Cは2000年から2012年間の製造業の貢献度(変化率)を示している。日本が▲ 1.8%であるのに対し、ドイツは1.6%である。2000年以降、ドイツが製造業回帰に注力してきたことがわかる。
その中でも注目すべきはドイツ企業の国際性である。VW,Siemens, BASF等ドイツを代表する大企業の売り上げに対する海外シェアは軒並み80%を超えているし、GDPに占める輸出の割合も46%と日本やアメリカに比してかなり高い。大企業の従業員の58%が国外で就労し、経営取締役の30%は外国人である。
たしかにドイツはEUの一部であり、地理的にも国際化が進みやすいかもしれないが、それでも突出したこの数字はドイツの製品やサービスが世界で認められると同時に国際的な目を常に養っていることの表れと見て取れる。
また、もう一つの特徴が、所謂「Hidden Champion」(隠れたチャンピオン企業) と呼ばれる中小企業(Mittelstands) が数多く存在する点である。明確な定義はないが一般的には従業員数500人未満、売り上げ5千万ユーロ前後とされている。特徴として非上場で家族経営、地域に根ざし小規模ながら独自の技術を有し戦うドメインを集中し、無名ながら特定フィールドにおける世界シェアの大きな割合を占めている。
スマートカード用接着剤で世界シェアの8割を有するデロ社(従業員数300名)はその代表だ。この会社は長年の研究開発費への積極投資、顧客との共同開発、技術の徹底的なブラックボックス化により他社が真似できない技術を確立し高シェアを維持している。
ショッピングカートで世界の60 %シェアを誇るWanzlもMittelstandの一つである。
これらの中小企業の特徴は小さいからと言って地元の殻に閉じこもらず、自らを「下請け」と定義せず果敢に世界へと飛び立っていることであろう。ケイレツ取引に代表されるサプライ・ピラミッドの中で自らを位置づけてしまいがちな日本の中小企業には大いに参考になるのではないだろうか。
こうした、世界に認められたドイツ企業の躍進の背景にはそれぞれ様々な理由があろうが、ここでは大きな特徴として3点を議論する。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授