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» 2015年05月18日 08時00分 公開

ドイツに学ぶ中長期視点の経営視点(4/4 ページ)

[岡村暁生,ITmedia]
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4、日本企業の経営に対する示唆

日本企業の経営に対する3つの示唆

 このように、日本との類似性の高いドイツにおける経営スタイルを見てきたが、最後に日本企業にとっての示唆を大きく3つ議論する。

(1)市場環境を自ら作っていく

 市場環境に対応するのではなく、自ら市場環境を作っていく考え方を持ちたい。

 高度成長期からバブル崩壊までの日本企業は市場環境に対応するというよりは、右肩上がりの市場環境に乗っかり著しい発展を遂げた。そしてバブル崩壊後は米国式経営で市場環境に臨機応変に対応することを学んできた。次は自らが市場を作る、といった視点が必要になるのではないか。

 大企業にとってはVWに見られるような市場の引き寄せが技術革新の目覚しい現代ではますます重要になってくるであろうし、中小企業にとっては自らの位置づけを今一度見直してみることが重要であろう。

 日東電工では「三新活動」と称して以前から「新市場開拓」と「新事業モデル構築」を継続的に行っている。つまり既存技術の新用途開発(新市場開拓) と既存市場における新製品開発(新事業モデル構築) から新需要を生み出すという発想である。ある意味日本型の市場の引き寄せと言えまいか。

(2)現場力をもう一度作り上げる

 元来、日本は人材育成を得意としてきたと思える。その均質な人材育成により日本は極めて高い現場力を維持し世界最高品質を達成してきたのである。

 しかし、それは今までは主に工場等における労働現場について語られることが多く、今後はホワイトカラーにおける現場力をより一層高めることが重要であろう。

 それは即ち、専門家の必要な領域では高等教育を受けた専門家をきっちり育成し、またホワイトカラー現場で効率化できる部分は徹底的に効率化・業務を減らし、戦略立案、計画策定、実行のための事業部サポート、つまり事業部の現場が効果を発揮できるような効果的援助をできるプロフェッショナル人員を創り出すことである。

 今後、団塊の世代が抜け、労働人口の減少が見えている中、早急に仕組みとして確率する必要があるのではないだろうか。残念ながら、ドイツの様な政府支援は日本にはあまりないが、これは企業内でも十分に取り組めることである。その為には、米国式の安易なリストラは控え、雇用を維持してスキルの喪失を防ぎ、長期視点で育て、活用、場合によっては転用して行くことが大事である。

(3)新しい発想で海外へ出て行く

 今や日本の企業もほとんどが海外展開をしている。しかし、例えば大手消費財メーカーで海外比率が50%を超える企業は実は多くない。

 またケイレツ式のサプライ・ピラミッドの中の要望でのみ海外展開をしている企業も多い。

 インターブランド社の調査でグローバルブランドトップ100にしめる日本のブランドは7社、ドイツは10社である。グローバルブランドあたりのGDPで見ると日本は7,000億ドルでドイツの2倍、つまりGDPあたりのグローバルブランド数は2分の1である。

 乱暴ではあるが日本はまだまだグローバル化が進んでいないと言って良い。

 単に海外に事業所を展開するとか海外企業を買収するだけではなく、外に出て行くための味方を作ったり、自分の役割を再定義してHidden Championを目指すのも良い。

 海外の政府に影響力を行使して自社に有利な環境を作り上げることも可能である。

 トヨタがFCV (燃料電池車) の特許を無償で開放したことは記憶に新しい。FCVを世界で広げるために、あえて公開し、競合の巻き込みを狙っている。これこそFCVという新市場を作るだけではなく海外での地位を確立するための新たな方法ではないかと考える。その行く末を是非見守りたい。

著者プロフィール

岡村暁生(Akio Okamura)

ローランド・ベルガー 日本共同代表 シニアパートナー

慶応義塾大学理工学部卒業後、日産自動車にて設計開発に従事し、米系戦略コンサルティング会社を経てローランドベルガーに参画。その後、英系自動車技術会社リカルドジャパン代表取締役を8年務め、現職。マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院MBA自動車業界を中心に、経営戦略、海外展開、技術戦略、営業・マーケティング戦略、購買戦略、事業・組織戦略など数多くのプロジェクトを手掛ける。壮大な戦略もオペレーションの現場が変わらなければ意味をなさない事を信条に実行性のある戦略立案を重視


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