お客さま第一主義のもと、運賃の安さだけではなく、高いレベルの顧客サービスによって躍進を続けているが、選ばれるタクシー会社はどのようにしてつくり上げられたのだろうか。
1960年に創業したエムケイ株式会社。現在は、全国8都市で2000台のタクシーを保有する会社となった。お客さま第一主義のもと、業界の先駆けとなるあらゆる施策を実行してきたことで知られている。運賃の安さだけではなく、他社を圧倒する高いレベルの顧客サービスによって躍進を続けるMKタクシー。選ばれるタクシー会社はどのようにしてつくり上げられたのだろうか。
井上 MKタクシーはサービスの質が高いというイメージがありますが、サービスの質向上のために、どのような取組みをしてきたのですか。
青木 昔からサービスの質が高かったわけではありませんでした。一つひとつ改善を積み重ね、サービスの質を高めることで、今のおもてなしサービスがつくり上げられました。
私は、1983年にエムケイ株式会社に入社しました。入社してから役員になるまでの15年間、社内のさまざまな部署に所属し、あらゆる角度から会社を見てきました。今でこそ、おもてなしで評価をいただいているMKタクシーですが、30年ほど前は、おもてなしとはかけ離れた状況でした。
入社してから3年後に配属された営業所では、所長に歯向かったり、研修もまともに出ないような社員が大勢いました。態度の悪いドライバーが本当に多く、当時の私はそんな現場の状況を目の当たりにして、現状と理想の大きなギャップにショックを受けたのを覚えています。
いきなりそのような現場の状況を変えることはできません。小さな施策を積み重ねて、少しずつ改善していきました。
井上 具体的にどのような取組みによって今の高水準のサービスをつくり上げたのですか。
青木 当たり前のことを徹底すること以外にありません。「あいさつ」「笑顔」「無事故」の3つを一貫して社員に言い続けています。それらをずっと目標に掲げているのですが、完璧に100%達成できたことは未だにありません。
狭い空間の中でお客さまと接する中で、どのようにコミュニケーションを取っていくかがタクシードライバーとしての課題です。おもてなしを行動と言葉でいかに表すかを考えてきましたが、結局は当たり前のことを徹底して、全体のクオリティを高めていくことしかありません。例えば、忘れ物を未然に防ぐための取組みとして、ドライバーには、お客さまに「お忘れ物はございませんか」とお声掛けし、降車された後にはドライバー自身の目で確かめるよう徹底させています。
井上 革新的なことしているイメージがありましたが、その裏には当たり前のことを100%に近づける努力があって成り立っていたのですね。
青木 当たり前のことを継続して言い続けることだけを意識してきました。1回目で言うことを聞く人間は1%か2%、2回目で聞く人間は5%から10%です。10回目でやっと9割に浸透しますが、100%にはなかなか近づきません。同じことを何度でも言い続けるしかないんです。私たちは何度も反復して言い続け、常に意識させることによって、サービスの質を高めてきました。朝から晩まで言い続けるんですから、指示する側の継続性や忍耐が試されるくらいに大変なことです。
継続して言い続けるといっても、私だけでは限界があります。ポイントは、私と同じように動いてくれる営業所長、ブロック長などを育てていくことです。社員全員を引っ張っていく推進力をつくるためには、自分の分身のような働きをしてくれるリーダーが必ず必要なのです。
ドライバーと接していて気になることがあったら、その場で何度でもやらせて正すこともあります。「ありがとうございます」と言う声が小さかったときなど、納得いくまで何度でもやらせます。その瞬間に注意し、直すことも必要です。
会社の方針についても、私が直接社員へ向けて話をしています。100人ずつ営業所に集め、今月の目標、MKタクシーの今後の方針などについて事細かに説明します。今の会社の状況についてあらゆる側面から伝えることで、会社の方向性と社員一人ひとりの方向性を合わせていくための取組みです。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授