連載
» 2015年06月22日 08時00分 公開

デジタルヘルスの本質を見極める視点(3/4 ページ)

[徳本直紀,ITmedia]
Roland Berger

3、デジタルヘルスのハードル

 注目を浴びる市場である一方で、製薬企業をはじめ、当該市場に対して本腰を入れて参入を試みる企業はまだ少ない。特に、BtoCの領域になればなるほど、ベンチャーレベルでの取り組みに留まっているのが現状であろう。これまでにローランド・ベルガーも製薬会社を始め当該市場参入を検討する企業を支援してきたが、「デジタルヘルス」を事業として成立させるにはいくつかのハードルがあるように感じている。そのハードルとは大きく3 つ、(1)マネタイズの難しさ、(2)ステークホルダーの多さ、(3)ライフサイクルの早さ、である。

(1)マネタイズの難しさ

 一般的にビジネスの対価は、そのモノもしくはサービスが提供する価値に対して、サービス享受者がどの程度のプレミアムを払えるかによって規定される(この場合は、ヘルスケアにおけるアンメットニーズのギャップをどれまで埋めるか)。そして、当該価値を生み出すために必要な投資・コストとプレミアムの差分が利益となって企業には戻ってくるのだが、現状のデジタルヘルスビジネスの難しさは、この差分が魅力的なビジネスがあまりないということである。

 例えば、患者の薬の飲み忘れを防ぐためのアラーム機能を持たせた服薬支援システムが既に市場に投入されているが、1台あたりの単価が10万円程度と個人で購入するには非常に高価なものとなっている。この10万円の費用を個人が負担するにせよ、病院が負担するにせよ、この投資費用と引き換えに得られる効果は数値として非常に反映させづらい。実態として普及には至らないのが現実であろう。

 一方で、スマートフォンを活用した健康管理アプリも近年では多く開発されているが、より多くの個人消費者へのアクセスを目指した場合、基本的にはフリーミアムで投入するしかない。もちろん、開発投資も一般的なシステムと比べると少なくすむはずだが、ROI(投資効率) の観点からすると決して旨みがあるとはいえないだろう。

 この問題を複雑にしているのは、「薬の飲み忘れ防止」であれ「健康管理アプリ」であれ、そこに患者のニーズは間違いなくある、ということである。加えて、実際にこうしたサービスの実証試験をやると、少なからず薬の飲み忘れが減ったり、健康的な生活を送るようになったりと、「具体的な効果が出る」ということだ。こうした結果を踏まえると、ニーズはあるし、効果も出る、したがってビジネスになるはずだ、と考えてしまいがちだ。しかし、「このニーズ、効果は支払う対価に対して見合うものなのか」という観点で見ると、いまだ事業として成り立つほどの付加価値はないと判断されている、ということになる。多くのベンチャーが発足しては消え、多くの企業や医療機関が実証試験をやるものの事業化に至らない背景には、持続可能なビジネスモデルが描けていない実情がある。

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