どれだけ能力があっても、人間力がなければ信頼することができない。器の大きな人は多くのひとが怖じ気づくところで落ち着いて判断することができる。人間力を高めるための3つの規律とは?
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」のバックナンバーへ。
「人間として小さい奴には、報酬を渡しておけ。地位を与えてはいけない。人間として大きい奴に、地位を与えることだ」西郷隆盛
人としての小ささ、大きさ、それが人間力と言えるかもしれません。
冒頭の西郷隆盛の言葉は、こう言うこともできます。
「どれだけ能力があっても、人間力がなければ、人として信頼することができない。そうした人物は、いざというときに弱いから、高い地位につけてはならない。逆に、器の大きな人間は、多くのひとが怖じ気づくところで落ち着いて判断することができる。人の上に立つ人物は、このような人物でなければならない」
人の上に立ち、リーダーシップを発揮する人こそ、スキルアップよりも人間力を高める工夫をしているように思います。人の上に立つ人ほど、スキルよりも、人間力への関心を持つようです。実際、私自身が「人間力の磨き方」というテーマで講演をするのは、エグゼクティブが集まる経営セミナーがほとんどです。
経営者の方々と話していると、「部下の方が最新の情報に詳しい」と堂々と言う人がいます。そこで焦るわけではありません。どうやら、トップの人間にしかできないことがあり、そこに専念しているようです。
その人たちはこう言います。
「わしらの仕事は、現場のもんが迷わんように、道を決めてやることや」
つまり、
・「何の目的に向かって、進むのか?」を決める
・「数ある道の中から、どの道をゆくのか?」を決める
この2つをリーダーは決めなければならない。組織やチームにとって重要なことを「決めること」こそ、リーダーの最重要の仕事になってくるのでしょう。
一般的に、スキルとは、「何かをすることができる」という能力を意味しています。資料作成のスキルであれば、上手な資料をつくることができることですし、プレゼンテーションのスキルであれば、上手なプレゼンテーションができることを意味するでしょう。
しかし、スキルは、「使い道」が決まっているから、意味があるわけです。どれだけ高いスキルを持っていたしても、そのスキルをどこで使うのか、何のために使うのか、という「目的」や「方向性」がなければ、スキルは生かされません。
目的や方向性を決めるために、マニュアルはありません。幅広い視野を持ち、さまざまな道の中から、リスクをとって決断をする。決断がなされなければ、そのチームや組織にあるスキルや資源は、十分に生かされません。
リスクが低いことを決めるのは、リーダーではなくて構わないのです。リーダーでなくてもできる、という方が正しいでしょう。リスクがある中で、自分にしかできない決断をする、それを実行していく中で人間力は高まっていきます。
答えが分かっているのであれば、何も決断する必要はありませんよね。不確定な状況だからこそ、私たちは決断をしなければならず、決断してはじめて物事が動きだします。そこを担う力が、人間力なのです。
特に現代は、不確実性が高まっています。決めてもリスクがある。決めなくてもリスクがある。そうしたときだからこそ、時代は決断する人が求められているのです。
このような状況で日々の意思決定をしていく力を持った人が、これからさらに影響力を高めていくのでしょう。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授