マイナンバー制度で問われているのは情報を守る価値観や新規事業の創造力企業のトップが見据えるべきマイナンバーの「先」(3/3 ページ)

» 2015年09月03日 08時00分 公開
[浅井英二ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

マイナンバーで新規ビジネス? 個人番号カードが「イノベーションの鍵」に

 今年5月の政府・IT総合戦略本部マイナンバー等分科会で示された利活用のロードマップによれば、来年、つまり平成28年1月の制度開始から希望者に交付される「個人番号カード」は、新たな「イノベーションの鍵」と位置付けられている。

photo マイナンバー通知カードと個人番号カード

 この個人番号カードには、マイナンバーや氏名、住所、生年月日、顔写真などはもちろん、インターネット上で本人確認できる公的個人認証の証明書もICに記録される。これまで公的個人認証サービスは、e-Taxなど行政機関の手続きに限られてきたが、民間にも開放され、より幅広い普及と利活用が期待されている。

 現在では数日から数週間かかっている銀行口座の開設もオンラインで即時行えるようになるだろう。インターネットバンキングにおいても今はIDとパスワードを入力しているが、個人番号カードに格納された電子証明書を利用すれば、より確実な認証も行えるようになるだろう。

 公的個人認証サービスが民間に広く開放されることで、これまで個別に発行されてきたさまざまなICカード、例えば、社員証から始まってキャッシュカード、クレジットカード、ポイントカード、診察券なども、個人番号カードに一本化されるとみられている。公的機関が発行する国民全員が取得できる唯一の「ICカード身分証明書」による、いわゆる「ワンカード化」の促進だ。

photo 5月の政府・IT総合戦略本部マイナンバー等分科会で示された「マイナンバー制度利活用推進ロードマップ(案)」(出典:首相官邸 新戦略推進専門調査会マイナンバー等分科会の資料)

 「厚生労働省は個人番号カードを健康保険証として利用できるよう準備を進めている。病院は健康保険資格情報をより確実に確認できるようになるし、薬局はお薬手帳として利用できるようになることも想定される。どのような情報をマイナンバーとひも付けていくか、しっかりとした議論が必要だが、例えば、個人の病歴や投薬歴などが確認できるような基盤が構築されれば、よりよい医療サービスが提供できるようになる。一本化で普及が促進される個人番号カードと公的な個人認証の仕組みをどう活用していくのか、今後、より多くのアイデアが出てくるに違いない」(錦織氏)

 平成29年から個人が利用できるようになる情報提供等記録開示システム「マイナポータル」では、社会保障や税の手続きが簡素化できるほか、将来は電気、ガス、水道などの公益企業や、金融機関などの民間企業に住所変更を一斉に伝えられるワンストップ機能を盛り込むことも検討されているという。

 これまで日本企業は、個人を特定する情報がありそうでない状態で何とかしてきた。公的個人認証サービスが利用できるマイナンバーでもっと効率化できるだろうし、情報システムも簡素化できるだろう。政府は2020年の東京オリンピックに向け、「世界最高水準のIT国家」を目指している。ワンカード化の先には、生体情報をあらかじめ登録しておくことで、生体認証によって競技場に入場できるシステムの構想もあるという。企業も知恵の出しどころだ。

特集まとめ読み特別冊子 プレゼント応募フォーム

特集『間に合わせる、その後も見据える「マイナンバー緊急対策 実践指南」』の特集記事をまとめた電子冊子(PDF)を、特集終了後にプレゼントいたします。


<<< 応募はこちらから


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆