日本で農業をやっても儲からない、だから若者は就農を嫌がり、高齢者ばかりが細々と続けている。その先入観で、北海道の農業地域を訪問し、現場を見聞きすると、全く違う光景に出会う。マスメディアの偏った報道だけで、日本の農業を捉えようとすると完全に間違ってしまう。
北海道では、若く意欲溢れた農業経営者が、最新の農業機械を導入・駆使して、家族以外の雇用者とともに、高度で洗練された農業生産を行い、十分な所得を稼ぎ出している。昨今、耕作放棄地が問題になる中、彼らは、数十ヘクタールの農地を既に有していながら、売り農地/貸し農地の出物を虎視眈々と狙い、営農規模の更なる拡大を狙っている。ゆめぴりか、ななつぼし等、ブランド米の人気も上がっているが、北海道の主力品目は、畜産と畑作であり、高付加価値作物で儲けているというよりは、高い生産性を背景に強い農業を創りだしていると解釈すべきである。
その高い生産性は、ひとえに広大な農地面積を背景とした大規模農業の実践にある。農家戸数こそ全国の約3%に過ぎないが、15ヘクタール以上の耕地面積を運営する農業経営体の約68%は北海道に集中している。
北海道に限らず、大規模農家の生産性は、都府県でも高水準であり、農家数こそ少ないながらも、生産性は北海道の大規模農家を上回るほどである。(図A参照)
即ち、大規模化こそ、TPP時代を生き抜く重要な方向感であり、農地集約は避けては通れない道と言えよう。政府は、2013年度に農地中間管理機構を創設し、売買・賃貸借により、約3万ヘクタールの農地権利移転を行った。これは、旧農地保有合理化法人時代と比較すると約3倍の成果であるが、年間目標の約2割に留まっている。現在、検討中の耕作放棄地に対する課税強化や農地中間管理機構への賃貸農地への課税軽減などが推進されていけば、農地集約を後押しする効果が期待できよう。
更に、産業界で話題のIoTが、営農大規模化の効用を高め、日本農業は第四世代の構造的変化が今後数年で確実に行っていくものと確信している。
1〜2万年前に人類が発明した農業の進化を振り返ると、時代時代の先進的な技術を適用しながら、農作業時間を短縮する構造的変化、平たく言えば労働生産性向上の歴史であった。第一世代から第三世代にかけては、工業化の進展に伴い、動力(馬力) と道具(作業効率) を「代替」することで、生産性向上に大きく貢献してきた。第四世代は、モノではなく、コトの技術革新を梃子に、機械同士と各種データが「繋がる」ことで、新たな営農手法を「創造する」点で、これまでの構造的変化と大きく異なる。
第四世代の農業構造的変化「農業4.0」への対応こそが、次世代型日本農業の可能性を左右する。(図B参照)
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明治学院大学 経済学部准教授