この「対話」によるコミュニケーション密度は、当初我々が想像していたよりも遥かに豊かな情報を内包しており、受け取り側には企業の真の姿が垣間見える。「どのように提供するか」や「何を提供するか」以上に「どのような「人」が提供しているのか」が重要になってくる。
「対話を拒む相手」、「対話するが腹の底で何を考えているか分からない相手」、「真に信頼できる相手」。その差は大きい。
企業が口当たりの良い表現を遍く使うということも当然認識しているし、その言葉が単なる表面上の言葉でしかないということも認識している。人々はあらゆるコンタクトポイントからの情報を収集(もしくは情報収集の窓口が閉ざされているということを認識)、それを基に個人的見解を作り出す。
そしてその結果として評価されるのは「付き合う相手として本当に最良の相手なのか」という非常にシリアスなものだ。それは信頼感という関係性に行きつく。人と人との関係性でも一時的な激しい感情から、徐々により本質的に深化し、安定した信頼性という感情へ移行していく。ずっと連れ添い対話を重ねることでそれは訪れる。対話の回数こそがものを言う。同じことが企業と人にも言える。それだけの質のコミュニケーションが企業からも可能になり、かつての企業と個人を超えた関係性が育まれ出してきたということだ。
その時、最も回避しなければならないことは信頼性を損なう行為だ。「ごまかし・隠蔽」、「ひっかけ」などは徹底的に排除しなくてはならない。しかし旧態然としたシステムで強さを誇った企業ほど、これらを気づかないうちに企業へ内包してしまっている。
ベースとしての誠意・誠実さを持ちつつ、それをうまく伝える方法を培う。かつての表面的表層的な付き合いではない。人と人との関係性に近い。
企業がどのような人間性(=企業人間性)を持つか。そこへの明確な解とそれをシンプルに伝える術を持つことが早急に求められている。
人に置き換えたときにどのような性格でありたいか。表面的なお客様志向や社会的責任等ではない、一個人としての会社の人格。それは株主やユーザー、従業員等いずれのステークホルダーからも本質的根っこが同じにならなくてはいけない。そしてコーポレートブランディング戦略の在り方や顧客戦略、事業ポートフォリオをそれに合わせて抜本的に改革する必要がある。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授