「母親」と「他人」は自分で選べるが、「他者」は、選べない、わけの分からないキャラ。他者を母親か他人のどちらかに放り込もうとするとメンタルダウンする。
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」バックナンバーへ。
仕事で、メンタルが落ち込むことがあります。仕事の悩みは、実は、人間関係の悩みです。
人間関係には、
(1)母親
(2)他人
社会に出るまでは、この2つだけです。
(3)他者
社会に出るとこの3通りになります。
「他人」と「他者」とは、どう違うかです。「他人」は、まったく関係のない人です。「母親」は、100%自分を守ってくれる人です。「他者」は、その中間です。
学校へ行くまでは、人間関係は「母親」だけです。学校へ行くようになると、世の中には「他人」がいることに気づきます。人間関係が関係100%と関係ゼロ%の人だけなら、なんら問題は起こりません。
むずかしいのは、100%でもなく、ゼロ%でもない、「他者」という存在があることです。
学校時代は友達を選べるので、ムリに「他者」とかかわらなくてよかったのです。会社に入ると、いきなり上司という「他者」にかかわらざるをえない状況に追い込まれます。
上司は選べないし、「イヤだ」とも言えません。「お客様」も「同僚」も、自分が選んだ存在ではなく、環境から押しつけられた「他者」です。
「母親」と「他人」は自分で選べます。「他者」は、自分で選べない、わけの分からないキャラです。ストレスで行き詰まってメンタルダウンする人は、「他者」を「母親」か「他人」のどちらかに放り込もうとします。
3通りあるものを、ムリヤリ2通りの形へ戻そうとするのです。その人は、上司を母親と考えます。母親には利害関係がありません。上司には利害関係があります。仕事をして会社に利益を上げてもらわないといけない立場です。100%、「いいよ、いいよ」「かわいい、かわいい」と言ってもらえないのです。
母親は、なんでも教えてくれます。上司は「そんなことは背中を見て覚えろ」と言います。「上司は母親ではない」と思った瞬間、上司を「他人」に追いやって、ゼロ%の関係にしてしまうのです。
本来、「他人」は、満員電車に乗り合わせても、スクランブル交差点ですれ違っても、まったく害はありません。その「他人」が、いきなり「あの仕事、どうなっているんだ」と脅迫をしてくるのです。
これで、どうしていいやら分からなくなります。
問題点は、「母親」と「他人」の中間の「他者」という関係を持っていなくて、甘えすぎたり、完全に無視してしまったりすることです。そもそも世の中には3種類いるのに、ムリヤリ2種類にしようとすることには限界があるのです。
ここから意識を変えていきます。
上司は、「母親」でもなければ、「他人」でもありません。「母親」だと思って甘えていると、どこかで突き放されます。
100%の関係に近い上司であればあるほど優しくしてくれます。「おまえはオレの子どもだ。オレを親と思え」と言うのです。「100」と思っていると、「1」足りなくて「99」になった瞬間に「裏切られた」ということになります。このショックが大きいのです。
上司に限らず、仲よしと思っていた同僚にも、これが起こります。裏切ったわけではありません。自分の期待値が「母親」だったので、それとの落差を「裏切られた」「冷たくされた」「突き放された」という解釈をしただけです。
相手は最初から「99」とか「1」の存在です。動いたわけではないのです。特に、日本の会社は、家族的であって家族ではないところが、むずかしいところです。
外国の会社は、最初から利害団体で、「他人」なのです。親と他人の、中間の関係を持ちましょう。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授