「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」創業時の資金に乏しい場合でも、金銭の返済なしに資金調達が可能に。
インターネットを利用して不特定多数の人から資金を集める「クラウドファンディング」という仕組みを知っているだろうか。2011年3月にオープンした「Readyfor(レディーフォー)」は、日本のクラウドファンディングの先駆けとして知られ、市場を作ったパイオニアだ。「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」をミッションに掲げ、これまでに6300件以上のプロジェクトの資金調達を行い、26万人から40億円以上の支援金を集めてきた。日本最大級のクラウドファンディングサービスに成長を遂げた「Readyfor」代表取締役の米良はるか氏に、起業のきっかけから多くの支援者を獲得する秘訣(ひけつ)まで聞いた。
井上 インターネット上で資金調達を行う「クラウドファンディング」ですが、具体的にどういった人に向けたサービスなのでしょうか。
米良 事業のアイデアがあったとしても、創業時は実績がないため、金融機関からの融資が下りないことが多々あり、新たなチャレンジが生まれにくい状況があると思います。創業時の資金に乏しい場合でも、私たちが運営している購入型のクラウドファンディングでは、お金を出してくれた人に対して、金銭以外のリターンを返す仕組みになっています。そのため、金銭の返済なしに、資金調達が可能なのです。
具体的な事業内容や事業に懸ける思いをクラウドファンディングのサイト上で語ってもらい、それに賛同する人から資金を集めます。
井上 どういったリターンがあるのですか。
米良 事業によって本当にさまざまです。店舗開店のプロジェクトでは、クーポン券をリターンとして用意したり、ものづくりのプロジェクトでは、実際に売り出す製品を提供したりします。社会的なプロジェクトでは、オープンする施設に名前を掲示するというオーナーシップ特典もあります。それぞれのプロジェクトによって、どういったリターンがよいかを考え、工夫しています。
井上 クラウドファンディングは事業を起こしたい人のチャンスを生かすと同時に、人と人をつなぐ役割も担っているのですね。
米良 資金を集めるだけではなく、顧客を獲得する方法として使われている面もあります。神楽坂のサラダボウル店開業プロジェクトでは、1万円出してくれた人へのリターンとして、サラダボウルが無料になるクーポン券を7枚用意しました。
これにより、創業前にリピーターになりやすい有力顧客の獲得につながりました。お金を先に出してもらうことによって、先に売り上げを立てられるというのもメリットのひとつです。お金を集めるだけではなく、顧客創出のマーケティングツールとしても役立った事例です。
井上 集める資金の設定もさまざまなのですね。
米良 目標金額が数十万円ほどの小さなプロジェクトもありますし、6000万円などの大きなプロジェクトもあります。一口の支援金額の平均は約1万円ですが、多くのプロジェクトで3000円から支援が可能です。プロジェクトを起こす人も、支援する人も、どんな人でも参加でき、目標金額に届かなかった場合でも、何度でも挑戦できます。
井上 「Readyfor」を立ち上げたきっかけを教えてください。
米良 大学生のとき、パラリンピックのクロスカントリーチームの資金不足を解消するため、インターネット上に投げ銭の仕組みを作った経験がきっかけになっています。インターネットで多くの人から少しずつお金を集められる仕組みがあれば、チームを応援できるのではないかと考え、プロジェクトを立ち上げたところ、結果的に120万円を集めることができました。
この経験を通して、相手が知らない人たちであっても、きちんと思いを伝えれば、お金を集めることができるということに大きな感動を覚えました。このことをきっかけに、チャレンジしたい思いはあるけれど、資金不足の人たちに向け、何か事業として展開できることがあるのではないかと考え始めました。
井上 学生で120万円を集めたというのはすごいですね。
米良 それからアメリカに留学し、「クラウドファンディング」というキーワードを知りました。当時、日本国内にはまだクラウドファンディングの仕組みがなかったので、事業として立ち上げようと、「Readyfor」を始めました。
井上 「Readyfor」でプロジェクトを立ち上げられるかどうかの基準はあるのですか。
米良 どんな人でも利用できますが、プロジェクト開始前に、資金調達で集めるお金の使い道や、お金が集まったときに公言したことを実行できるかどうかの審査をしています。
井上 プロジェクトスタートへ向けて、サポートなどはあるのですか。
米良 私たちは今までに6300件以上の案件に携わってきました。プロジェクトによって見るべきポイントがノウハウとして蓄積されています。そのノウハウを手厚いサポートにより提供しています。専門のキュレーターがプロジェクトスタートに必要なものなどを示し、一つ一つのプロジェクトに合わせてマンツーマンで丁寧にサポートします。「Readyfor」でプロジェクトを立ち上げたいと考えたら、まずは電話1本から相談できます。
井上 キュレーターはどういった役割を担っているのですか。
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明治学院大学 経済学部准教授