「目玉おやじ」のような小さな賢いキャラクターが助けてくれる――ロボットの未来はそんな感じNTT DATA Innovation Conference 2018レポート(2/2 ページ)

» 2018年02月28日 07時07分 公開
[山下竜大ITmedia]
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 ロボットはどのような役割を担ってくれるのだろうか。人間にとって難しいことがコンピュータにとっては簡単で、人間にとって簡単なことがコンピュータにとっては難しいことである。もし万能のお手伝いロボットができても、仕事は1つずつしか片付けられない。人間は、家電製品を使い分けて並列に家事をする。つまり技術的な問題だけでなく、コンセプトとして万能お手伝いロボットには矛盾がある。

 「ロボットに対する事前の先入観や期待値と実際の性能の差により、喜んだり、がっかりしたりする。そこで、期待値をコントロールすることが必要になる。例えば、等身大のロボットを作ると人間並みの働きを期待してしまうが、小さいロボットだと人間以下の機能でも小さい割に賢いと感じる」(高橋氏)

 お掃除ロボットの販売台数は、約2000万台といわれている。これは、日本のメーカーも開発していたが、日本市場で最初に成功したのは海外メーカーの製品であり、日本のメーカーは後追いになっている。海外メーカーが成功した理由は、ロボット掃除機に対する期待値をうまくコントロールしたからである。

 初代のお掃除ロボットはおもちゃとして、今の3分の1の値段で発売された。なぜなら当時、お掃除ロボットとして販売しても、誰も信用しない。そこで、おもちゃだと期待していなかったが意外に役に立つと消費者が気付くのを待って、本格的なお掃除ロボットを販売するという作戦が成功したのだ。

スマートフォンが歩いて何か役に立つのか

高橋氏と会話をするロボホン

 今後、人型ロボットは、どのようなステップで普及させていけばいいのだろうか。カギになるのがスマートフォンである。現在、大人気のAIスピーカーは、音楽を聞いたり、買い物をしたり、家の電気をつけたり、いろいろな機能を音声で操作できる。しかし、こうした音声対応の機能は、すでにスマートフォンに実装されているが、あまり利用されていない。自宅で飼っている犬や猫、金魚などのペットには話し掛けるのに、スマートフォンに話し掛けないのは四角い箱に感情移入できないのがその理由ではないかと考えた。

 そこで、スマートフォンに、手、足、頭を付けて、ロボットにしたのが「RoBoHoN(ロボホン)」である。講演では、ロボホンを使い、自己紹介や天気の確認、音声による電話やメールの発信、歩行、ダンスなどを披露した。また、カメラ機能を使い、写真や動画を撮って、おでこに内蔵されているプロジェクターで投射する様子も紹介された。

 「スマートフォンが歩いて何か役に立つのかと思うかもしれないが、歩くと生きている感じがあり、話し掛けやすくなるメリットがある。会話することで、声や顔、仕事、住んでいる場所、好きな芸能人など、さまざまな情報を記憶してくれる。また、新しいアプリをダウンロードすることで、どんどん賢くなっていく」(高橋氏)

 なぜ話し掛けてもらうことが重要かといえば、話し掛ければ、それだけたくさんの情報をスマートフォンが取得することができるからである。たくさんの情報が得られれば、さらに付加価値の高いサービスを提供することもできる。

 高橋氏は、「ゲゲゲの鬼太郎の“目玉おやじ”や、魔女の宅急便の“ジジ”のように、小さな賢いキャラクターが主人公を助けてくれるという設定は数多くある。そんな存在が、スマートフォンやロボットの未来ではないかと考えている。ガラケーの時代からスマートフォンの時代になり、その次はロボット電話の時代かもしれない」と話す。

 これまでの家電は、手洗いが大変だから洗濯機を作ろうという課題解決型だった。これからの先進国型産業創生は、面白さや好奇心の先にある。TwitterやFacebook、YouTubeなどは、必要だからヒットしたわけではなく、使ってみたら便利で楽しかったので広く受け入れられた。

 高橋氏は「AIやロボットで、人の仕事の仕方は変わっていくが、大事なのは自身の興味や好奇心で、それがイノベーションを生み出す。人生全て選択の連続だが、リスクの少ない方を選択するのではなく、ぜひユニークな方を選択してほしい。苦労はするかもしれないが、それを解決した経験は得難いものになると信じている。

 スマートフォンを買い替えるときに、四角いスマートフォンが並ぶ中に、なぜか、手、足、頭が付いたスマートフォンを見つけたら、値段は倍もするし、使いにくそうだと思うかもしれないが、ぜひユニークな方を選択してほしい。それにより、生活が少しだけ豊かになると思う」と話し、公演を終えた。

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