50代はウハウハは十分手に入れた。ここから手に入れるものは、ウハウハではなく、ワクワク。
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リーダーとして、部下としての扱いが難しいのは、若い世代だけでなく、50代の扱いが難しいです。自分自身が、50代としてどう生きていいか、迷いがあるのです。
ゾンビ映画は、「ゾンビと戦う物語」と思われています。実は3部構成になっていて、第1部がゾンビとの戦いです。第2部は、人間同士の戦いです。人間同士の戦いは、「あの人はゾンビに感染しているのではないか」という疑心暗鬼から、さらに戦いが厳しくなります。
第3部は、自分の弱い気持ちとの戦いです。『ジョーズ』にしても『エイリアン』にしても、すぐれた映画は、全てこの3部構成で成り立っているのです。
これと同じことが、30代、40代、50代で起こります。30代は、競合、ライバルという敵との戦いです。40代は、味方との戦いです。敵との戦いは、まだいいのです。味方との戦いは複雑です。ドラマ『半沢直樹』でも、敵との戦いから味方との戦いに変わった時に、さらに話が複雑になっていきます。
50代は、自分との戦いです。今までの弱い自分をどう乗り越えていくかの戦いになるのです。映画『アイアムアヒーロー』は、日本のゾンビ映画では画期的な作品です。気が弱いのにヒーローになりたいと思っている主人公の男性が、最後に自分の気の弱さとどう戦っていくかという物語です。
これが自分との戦いです。50代は、一見、完成されたようです。ここで、今までの自分を乗り越えていく戦いをするのが、50代なのです。リーダーは、これまでの自分を乗り越える年代なのです。
50代になると、降格と減給という体験に迫られます。今までは、ずっと出世の連続でした。給料でいうと、30代はイケイケの右肩上がりです。40代になると、それが止まるのです「おや、このままイケイケで行くつもりだったのに、止まるぞ」ということが、ここで分かります。
止まるだけなら、まだいいのです。50代になると、一生懸命働いているのに給料が下がるという事態が起こるのです。
運動選手にも、「伸びていく時期」と「止まる時期」と「下がり始める時期」があります。例えば、村上春樹さんは世界的な作家でありながら、同時にアスリートです。作家が走っているのか、走っている人が書いているのか、どちらか分からないぐらいです。病院に行くと、「アスリートの方ですね」と言われるそうです。午前中は書いて、午後は走っているという生活をしているのです。
やがてピークを過ぎて下り坂になった時に、それとどうつきあっていくかです。そこに哲学が生まれます。50代は長距離ランナーになっていった方がいいのです。
皇居のまわりでは、プロに近い選手から、市民ランナー、趣味の人まで毎日走っています。追い越されると、イラッとして飛ばしたくなります。ここで「どうぞ先へ行ってください」と言えるのが、ベテランランナーです。
50代には出向があります。「栄転」という名目の「左遷」という形で関連会社に行ったり、どこか遠くへ飛ばされたり、そのまま島流しのような形で一生を終わる人もいます。50代になると、たいていの人はこうした降格と減給でへこみます。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授