「ボイストレーニング」は、歌手や俳優がするもので、ビジネスパーソンには関係ないと思っていないだろうか。ビジネスパーソンがボイストレーニングをすることで、相手の心をつかみ、コミュニケーション能力を向上させることができる。
ITmedia エグゼクティブ勉強会に、声トレ塾代表でアメリカンフットボール「QB道場」道場長でもある新生剛士氏が登場。「人・組織を動かすリーダーの“声”――心を揺さぶる声の磨き方」をテーマに、アーティストの楠瀬誠志郎氏が考案した発声法「Breavo-Para(ブレイヴォー・パラ)メソッド」を紹介した。
新生氏は、1968年大阪出身。大学でアメリカンフットボール(アメフト)を始め、攻撃の司令塔であるクオーターバック(QB)として大学および社会人リーグで活躍。米国の8人制プロフットボールリーグにも挑戦し、35歳でプロデビューも果たした。その後、2005年より、Breavo-Paraのインストラクターとして活動している。
Breavo-Paraメソッドとは、背骨、肩甲骨、股関節、コアなど、身体を調整することで「声の音色」を変化させ、「身体の音色」で人を感動させる発声方法である。新生氏は、「Breavo-Paraメソッドに出会うまでは、カラオケが好きな程度で、発声方法について真剣に考えたことはなかった」と話す。
「社会人でお稽古事の情報誌の営業担当だったときに、楠瀬誠志郎が立ち上げたボイストレーニングスクールに営業に行った。アーティストが始めたスクールなので、歌の練習をするものだと思っていたら、“背骨、肩甲骨、股関節の調整による発声方法”と素晴らしい声で答えが返ってきたので、その場で反応してしまった」(新生氏)
背骨、肩甲骨、股関節を調整することは、QBが良いボールを投げるためのトレーニングと同じだった。当初は、発声にはあまり興味はなかったが、良いボールを投げることに役立つのではないかという、よこしまな気持ちでBreavo-Paraメソッドを学び始めた。
実際にアメフトにも大いに役立ったことから、現在、声トレ塾代表とQB道場の道場長を兼任している新生氏は、「実際に、アメフトの選手に、声を出しやすくするストレッチを、ボールを投げやすくするためのトレーニングとして取り入れることもあるし、アメフトのトレーニングを発声のレッスンに取り入れることもある」と言う。
ビジネスにおいて、メッセージを発信するときに、大事なことが大事なことに聞こえるような響きで伝えることが必要だ。時々相談されるのが、怒っていないのに、怒っているように思われるので何とかしたいということである。また、非常に重要なことを伝えているのに、重要だと伝わらないという悩みも耳にする。
「Breavo-Paraメソッドを学んで、“声って、ちゃんとトレーニングするとかわんねんなぁ〜”というのを体感し、自分自身の声が変わったのも実感した」と新生氏は笑う。インターネットで、“ボイストレーニング”を検索すると、歌のレッスンが数多く表示されるが、歌ではなく、声で人の心を動かすのがBreavo-Paraメソッドである。
声トレ塾の主な受講者は、歌手や役者を目指している人ではなく、一般のビジネスパーソンだ。企業研修やセミナーのプログラムを通じて、仕事のさまざまなシーンでのコミュニケーションをより円滑にするために自分の出したい声を出せるようになることを目指している。こうした問題は、声のトレーニングで解消できる。
この日のプログラムでは、ワークショップのビフォア/アフターで声の変化をチェックした。まず3〜4人のグループになり、声の変化を確認するために創作された「ゼファーの森」という短い詩を一人ずつ読み、他の参加者がトレーニング前(ビフォア)の声の印象をワークシートに記述する。
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明治学院大学 経済学部准教授