どんなに世の中が変化しても、人間が幸福を追求する動物であることに変わりはない。先ほどの例では表面的な現象や行為は違っているようにみえるが、根っこの欲求=根源的ニーズは不変であり、過去より脈々と続いている。先ほどの4つの例で考えていこう。
Aは、買うべきもの・買いたいものを「教えてほしい」という根源的ニーズである。必要なもの・買いたいものを特定するのは、実は難儀なこと。画像、ふんわりしたイメージ、解決したい問題……これらをベースに自動的にレコメンデーションをしてくれる。適時・適所で提案をしてくれる機能は人間の生活を豊かにするだろう。
Bは、「失敗したくない」という根源的ニーズである。「買う」という行為は、その時点で買い手が商品に関する多くのリスクを背負うことになる。似合わない、結局使えない、使いにくい、使ってみないと良さが分からない、使い続けないと良さが分からない、いつまで使えるか分からない、値段と品質と寿命のバランスが悪い。こういったリスクを避けたいのは当然のことであるが、それに応えられている商品サービスは決して多くはない。
Cは、「便利に入手したい」という根源的ニーズ。このニーズも非常に幅広い。すぐに買える、すぐにこの手元に届く、支払いが楽、ファイナンスが必要な場合は与信がすぐに下りる、足りなくなったら自動で補充してくれる、使い始めるまでの準備が短い、など。
Dは、買い物に「楽しみを加えたい」というニーズだ。ここでいう「楽しみ」というのは商品そのものの機能価値ではなく、その商品に伴って付加的についてくる価値のことだ。商品ストーリーへの共感、人とつながれる、応援をしたい、他者から認められたい、自己承認をしたい、使用後の変化をゲーム感覚で楽しみたい、などがそれにあたる。
大きく言うならば、根源的ニーズはこれら4つをかたまりとして捉えることができる。そしてそれらのかたまりはまた、複数のパターンに分化する。(図1参照)
商品特性によって該当するものは異なってくるものの、さまざまな分野にまたがってこれらのニーズを満たそうと、企業たちは必死に事業を進めてきた。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授