大企業が、事業の一つの柱として、ヘルスケア(本稿では医療機器を対象とする) への参入を図る場合、本稿のタイトルの通り、日本の臨床現場・技術を中心に革新的な事業コンセプトを生み出し、磨き上げ、日米欧3極同時申請により、一気呵成にグローバル展開、という戦略が、チャレンジングであるが有望な戦略オプションとなろう。(図A参照)
ステップ1は、メディカルアンメットニーズを解決しうる新しいイノベーティブな製品コンセプトで、日米欧3極同時申請・上市を目指す。特定の診療科および疾患領域にフォーカスするのが得策である。製品コンセプト策定から、製品開発、日米欧それぞれの承認機関の承認を得て、上市という流れになる。製品開発から上市まで数年を要するため、一朝一夕に事業化できるものではない。上市後も、製品の改良、SKU拡充、製造品質の作り込みといった製品面での強化のみならず、疾患知識・製品知識向上、アカデミック・ネットワークの強化等の営業組織の強化など、製品面以外でもやるべきことが多いが、事業を盤石なものとするための投資が必要。
海外展開については、申請前から、他力活用を想定しておくべき。自前展開もできないわけではないが、スピードとスケールを優先し、自前ではなく他社との協業による展開が望ましい。
続いて、ステップ2は、ステップ1で築き上げたコア製品の横展開である。横展開には、2つのパターンがある。1つ目は、疾患領域製品スペシャリストとして、周辺製品のラインアップの拡充である。これは、特定の疾患や手技に対する知識、エビデンスや医学的な根拠も含めた製品知識、対象疾患領域のドクターとのネックワーキング、学会や専門誌での存在感の発揮など、疾患領域特有の競争力や参入障壁を築いていくことになる。
もう1つは、要素技術スペシャリストとしての疾患領域横断的に事業拡大。カテーテル、ステント、ガイドワイヤなど、素材固有の技術力が多様な疾患領域を跨いで活用可能なケースが該当。いずれのパターンにせよ、はじめの一歩である、革新的な製品を生み出すことが最も重要であるため、ステップ1で押さえるべき要諦につき、次章で詳述させていただく。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授