インバウンド時代を生き抜くための 「創造的おもてなし」のススメビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

日本人とニーズが違う外国人をもてなすには?

» 2019年04月11日 07時13分 公開
[中川敬文ITmedia]
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インバウンド時代を生き抜くために必要な「創造的おもてなし」

『おもてなしデザイン・パターン インバウンド時代を生き抜くための「創造的おもてなし」の心得28』

 皆さんご存じの通り、訪日外国人数は年々増加しており、2020年には4000万人を突破する見込みです。私が代表を務めるUDSは、まちづくりにつながる「事業企画」「建築設計」「店舗運営」を行う会社ですが、事業に取り組む中でも日々インバウンドの増加を肌で感じています。

 その中で私たちの運営するホテルや飲食店の顧客に占めるインバウンドの比率も年々上がってきており、彼らのニーズと日本人のニーズが必ずしも一致しないことも体感として分かってきました。

 また、日本各地の地域活性を手伝うことも多いのですが、やはりどこも共通して人口減少が大きな課題です。人口が流出、減少することによる経済的ダメージを補填(ほてん)するためには、その地域に住む人=定住人口ではなく、その地域を訪れる人=交流人口を増加させていく必要があります。

 その一つの解決策としては、今後ますます増えていくことが予想される訪日外国人に、日本の各地域へと足を運んでもらうことが必要だろうと考えています。しかし、一部の自治体では外国人誘致に成功している事例はあるものの、まだまだ誘致し切れているとは言い難いのではないでしょうか。

 私のこの感覚を決定づけたのが、ヨーロッパからアジアまで、6カ国の外国人を集めて行ったヒアリングのワークショップでした。「日本のおもてなしについてどう思う?」と質問をしたところ、「日本人は知識量もあるし親切だが、ウエルカム感がない」と返ってきたのです。

 考えてみれば日本は四方を海に囲まれた島国で、これまでは国内の1億2000万人を相手に商売を考えていれば生きていくことができました。しかし状況は変わります。国と国との距離はどんどん近づき、さまざまな国の人たちが入り乱れ、より複雑な時代に突入しています。

 外国人も、日本人と同様にお客さまとしてきちんと考えていく必要がある現代においては、日本人だけを相手にしていたやり方、考え方の型から脱却する必要があるのではないか。そしてその際には、過去のものを完全に否定するのではなく、いいものは取り入れながら、今の時代に合うかたちにアップデートしていく必要があるのではないか。そのような考えのもとたどり着いたのが「創造的おもてなし」です。

 自分たちが提供する場や物のみならず、自分たちがいる地域や分野そのものの可能性を引き出しながら、自ら考え、動き、連携することで、ともに魅力をつくり、心に残る経験をプロデュースする……そんな姿勢は、サービス業や接客業ではもちろんのこと、これからさまざまな面でインバウンドを視野にいれていくことが必須となるあらゆるビジネスにおいても有用な知恵になると考え、書籍では「創造的おもてなしの心得」として、28個に分類してまとめています。

インバウンドは、あらゆる分野のビジネスマンが捉えるべきターゲットに

 先述の通り、インバウンドの今後ますますの増加は自明です。ですが、自分や自分たちの仕事には直接関係ないと思う人も、実はまだまだ多いのではないでしょうか。

 あるとき、高校生に対し「インバウンドという言葉を知っているか」と投げかけたことがあります。なんと知っていたのは1クラスのなかでたったの2人。しかもその言葉に対するイメージは「爆買い」だそう……多くの高校生はまだビジネスの現場もリアルも知りませんから、当然といえば当然なのですが、私自身が日々の経営の中で感じている危機感とのギャップがものすごく大きいのです。

 実際、日本の主要産業に関するデータを見てみると、「自動車」「半導体」「鉄鋼」「自動車部品」「インバウンド消費」が上位5つの産業ですが、このうち「インバウンド消費」以外は、残念ながら今後低迷していくことがほぼ確実です。

 その意味で、「インバウンド消費=観光業」は日本を支える主要産業になるでしょうし、もっと言えば、全ての産業がインバウンドを見据えて戦略を立てていかなければならないのです。どうすれば売れるだろう? どんな企画だと響くだろう? どうあれば人は集まるのか?……あらゆる場面で、インバウンドは常に捉えておかなければならない対象になっていきます。

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