連載
» 2019年11月14日 07時18分 公開

ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術:売ってはいけない 売らなくても儲かる仕組みを科学する (1/2)

販売至上主義で売れた時代はとうの昔に終わり、いまや「売らない店」が時代の最先端になっている。

[永井孝尚,ITmedia]

 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」バックナンバーへ。


『売ってはいけない 売らなくても儲かる仕組みを科学する』

 「日本のビジネスパーソンは正しい売り方を知らない人が多い。これが会社に閉塞感が漂う大きな原因の一つだ」というのは、マーケティングのプロとして「100円のコーラを1000円で売る方法」(シリーズ60万部)、「これいったいどうやったら売れるんですか?」(10万部)、「世界のエリートが学んでいるMBA必読書50冊を1冊にまとめてみた」(6万部)などのベストセラーを手掛けてきた永井孝尚さんだ。『売ってはいけない 売らなくても儲かる仕組みを科学する』(PHP研究所)を出版した永井さんに、話を聞いた。

正しい売り方を知らない日本のビジネスパーソン

 最初に、2つの事例をお話しします。

 ある会社で、営業責任者が社長に就任しました。彼の口癖は「数字は人格」「セールスが一番偉い」。社員には「大事なのは売上。今期売上に関係ない活動はやめろ」と厳命。目標達成が厳しくなると、社内会議は全て中止。全社員が売り子にかり出され、営業成績優秀者には青天井のボーナス。ノルマ未達者は厳しく処遇。

 就任直後からカンフル剤を打ち続け、売上は伸びました。しかし、こんなむちゃは続きません。その後間もなく、会社は低迷を始めました。パワハラ問題で社長は辞任。社内がバラバラになった会社は、立て直しの真っ最中です。

 社名が分からないように話を丸めていますが、私が関わった会社の実話です。

 経営レベルに限らず、現場も同じです。こんな電話を受けたことのある人は多いのではないでしょうか?

「〇〇社の□□と申します。お得な分譲マンションのご案内でお電話を差し上げました」

「どちらにおかけですか?」

「いまお電話を差し上げているお客さまに、お電話しているのですが……」

「ですから、電話をかけている相手は、どなたですか?」

「……電話番号リストの順番に、電話しているんですけど」

 売り込み先が誰なのか、当の本人も知りません。こんな売り方で売れたら奇跡です。ちなみに固定電話の時代は、受話器をテープで手に固定し一日中電話をさせ、強引に粘ることもあったそうです。

 「いくらなんでも自分は違う」と思うかもしれませんが、本当にそうでしょうか? 事前調査をせずに、「とにかく件数」と飛び込みセールスをする人はまだいます。

 販売至上主義で売れた時代は、とうの昔に終わりました。世の中は急速に変わっています。

 いまや「売らない店」が時代の最先端になり、商品開発の方法論もまったく変わり、流行のサブスクは従来の売り方では失敗するし、カスタマーサクセスというまったく新しい仕事も生まれています。

 しかし世の中ではいまだに昭和時代の「大量生産し、安価で大量販売」のやり方が主流です。現場は疲弊し、お客は怒って逃げ出し、企業は儲かりません。みな苦しんでいます。話題になったかんぽやレオパレスなどの不祥事の裏には、こんな間違った売り方が隠れていることも多いのです。

頑張って売っても儲からない理由

 問題の根っこにあるのは、「売ること」しか考えていないことです。ほんのちょっとだけ視野を拡げてみると、まったく変わってきます。「マーケティングの究極目的は、販売を不要にすることだ」と言ったのは、かのドラッカーです。必要なのは、販売至上主義からマーケティング発想への転換なのです。

 マーケティング発想がないから、いくら頑張って売り込んでも、儲からないのです。売ることが、全てダメなのではありません。売ることしか考えていないのが、ダメなのです。

 マーケティング発想で、ムリに売らずに自然に売れる仕組みを考えるべきです。お客は幸せになり、売り手が疲弊することもなくなり、より幸福な世の中になります。

 そこで本書では、ありがちな「売ってはいけない」ケースを取り上げ、理由を解明し、どのようにすれば売れるようになるかを、テーマ別に6章構成で具体的に考えていきます。

 第1章では、無理に売るのをやめて成功した事例を取り上げ、その理由を掘り下げています。

 第2章以降では、具体的な方法を紹介していきます。

 第2章は「販売戦略」。「お客さまは神様」と考えて売ると、逆に売れなくなります。

 第3章は「顧客」。私たちは意外と顧客のことを知りません。

 第4章は「プロモーション戦略」。目立つだけでは売れない時代です。

 第5章は「商品の戦略」。「商品開発」という発想自体を変えることが必要です。

 第6章は「価格戦略」。売れる価格だからといって、売ってはいけないのです。

 最後に「長めのあとがき」で、売る仕組みを定着させる方法を考えていきます。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆