企業の変身力を高める適所適財型BPR〜生産性に対する誤解を超えて〜視点(1/2 ページ)

事業は人なり。「個」人の適所適財なくして需要創造はおぼつかない。

» 2020年01月08日 07時05分 公開
[田村誠一ITmedia]
Roland Berger

日本再興のカギ「生産性革命」

 「生産性革命」。2015年6月に閣議決定された「日本再興戦略・改訂2015」のサブタイトル「未来への投資・生産性革命」に登場して以降、「生産性」は企業経営のキーワードの一つとなった。

 「生産性」とは、アウトプット÷インプット。アウトプットとインプットの定義により、指標は幾つか存在する。アウトプットを生産量とするのが物的生産性、付加価値額とするのが付加価値生産性。インプットを労働投入量とするのが労働生産性、資本ストック量とするのが資本生産性、労働・資本・原材料など全ての要素とするのが全要素生産性だ。

低迷する日本の付加価値労働生産性

 中でも、アウトプットを付加価値額、インプットを労働投入量とする「付加価値労働生産性」は重要指標。企業にとっての付加価値は、売上から外部購入費を控除した残り。国家にとっての付加価値は、国内の経済活動から発生した付加価値総額、すなわちGDP(国内総生産)を意味する。

 ちなみに、日本の付加価値労働生産性は47.5ドル(/時間)(2017年)。OECD加盟36か国中20位、主要先進7か国(G7)でみると、データ取得可能な1970年以降万年最下位だ。

 また、日本では「生産性」という言葉への誤解も多い。典型は、生産性向上が業務効率化を意味する、という誤解だ。業務効率化とはインプット極小化活動であり、分母削減は生産性向上につながるから、手段のひとつとしては正しい。しかし、日本の近未来を見据えると、これは本質的な問題解決にならない。

日本の生産性課題の特殊性

 日本の総人口は2010年をピークに減少を続けている。2030年には2017年比で6.2%減、2055年には同23.2%減。生産年齢人口は更に深刻で、1995年をピーク、2030年には2017年比で9.5%減、2055年には同33.8%減。今後、労働投入量は劇的に減少する。

 インプットが減少するから付加価値労働生産性は飛躍的に向上するか、というとそうではない。総人口減少はアウトプット(GDP)減少にも直結するからだ。AIやロボティクスで不足労働力補完できたとして、2017年の付加価値労働生産性(アウトプット÷インプット)を100とした場合、2030年のそれは104、2055年は116にとどまる。

 一方、超高齢化社会は目前。2017年に2.1人となった高齢者1人あたり生産年齢人口は、2060年に1.3人になる。つまり付加価値労働生産性が60%以上向上しなければ社会保障費を支えきれなくなる。生産性の飛躍的向上なくしては、国家がもたないのだ。

 総人口減少の中で付加価値総額(GDP)を増やす。課題先進国日本に身を置く企業経営者は、この難題に対し、新たな付加価値創造を通じ、消費(純輸出含む)・生産・分配の好循環サイクルを高速回転させなければならない。ローランド・ベルガーが企業の創造生産性(R)にこだわるのはこのためだ。

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