2つのポイントとは、
(1)モノやコトのあいだの「つながり」をつかむことと、
(2)つかんだときに生じる「ポジティブな感覚」に気付くこと、である。
ジグソーパズルでは、パズルを構成する(当初は)ばらばらのピースの間で、
(1)つながる組合せを見つけて、次々につないでいくこと
(2)最終的にパズルが完成したところで「できた!」というポジティブな感覚が生じる(それに気付く)こと、
のように2つのポイントが満たされている。
ただこれだけではスモール・ハピネスはまだ成立していない。そこでもう一点加える。
(3)(1)の「つながり」の結果生じた(2)の感覚を、自動的にスモール・ハピネスだと認めることである。
(3)は、スモール・ハピネスという一種のゲームにおけるルールと見なしてほしい。このルールは、いいかえると、(1)の何かと何かがつながったことから生じた(2)の感覚について、(3)それをスモール・ハピネスとよぶ(認定する)というルールである。
ところで、ある個人におけるさまざまな「感情」は、幼少期に周りの人たちから教えてもらったものであり、上記(3)のルールは、大人に対して新しい感情(スモール・ハピネス)を教える機能を果たす。慣れてしまえば、ルール抜きで自動的に生じる感情になっていく。
ジグソーパズルは、「(1)つながり」と「(2)そこから生じるポジティブな感覚」が直観的に分かりやすいので最初の例として用いたが、ジグソーパズルを毎日する人はあまりいないだろう。他方、私が提案するスモール・ハピネスは毎日味わうことを想定していて、その内容は実に多様であり日常的でもある。そこで、多様性と日常性のさわりを示す例を2つあげる。
例えば、人材Aと人材Bが実際に会話して、(1)お互いの考えや気持ちがつながると、(2)心が通ったと感じて少しうれしくなる(うれしいという感覚が生じる)。「つながり⇒感覚」ときたら、あとはスモール・ハピネスゲームのルールに従って、(3)その感覚をスモール・ハピネスと認定すれば、晴れてスモール・ハピネスが生じる。ゲームに慣れてくれば、(1)のつながりが成立すると自動的にスモール・ハピネスの感情が生まれるようになる。
スモール・ハピネスの例として、ジグソーパズルと会話に触れたが、これだけではスモール・ハピネスの大海から柄杓で2杯すくった程度だ。最後に、もう数杯、締めのスモール・ハピネスをすくっておこう。
いずれもキャメルの例で、上記のポイント(1)のつながりをつかむことを中心に記述している。(2)のポジティブな感情にはふれていないものもあるが、文脈から明らかだろう。(3)はルールとしての認定なので記述は省略している(キャメルの場合はゲームに慣れており、(2)⇒(3)は自動化されていていわずもがなとなっている。)
例1:WHY/WHAT/HOW(YWH)を使って物事を読み解くことが、ここ2、3年続けている「趣味」兼「仕事」なのだが、書店で何げなく手に取った本をぱらぱらめくっていると、事例紹介があり、それがYWHにぴったり当てはまる形だった。(⇒YWHは、3ポイントのうちの(1)を強化する方法なので、回をあらためて詳しく話したい)。
例2:見ず知らずの赤ちゃんとすれ違ったとき、僕向けにニコニコしながら足をバタバタしてくれたように見えた。こっちも思わずニコニコする。言葉を介さない「つながり」が成立した。(⇒スモール・ハピネスと関係なく、日常で、何かポジティブな感情が起きたら、その原因に「つながり」がないか考えることはゲームを上達する一つの方法だ)
例3:なかなか取り組めなかった大学の講義(番組)の再収録に、なぜかふと取り組もうかという「その気」が起きて、事務局に収録の依頼をメールした。重い腰があがり仕事(収録)につながった。(⇒スモール・ハピネスをやりこむと、それまでなら重大決心が必要だったことが、ふと軽くちょっとやってみようかという感じで取り組める「つながれる」ようになる。)
これらの例から垣間見えるように、何かと何かがつながる例は多様で、そこから生まれるスモール・ハピネスも多様になりえる。(3)のスモール・ハピネスの成立をいわずもがなとして省略したが、実際にはキャメルは都度心の中で「スモール・ハピネス成立、ありがとう」ということにしている。一種の自己肯定で、再び新たなつなぎに向かう動機づけとなる。
本名、山本成一。学芸大学付属高校卒、東京大学法学部卒業後、外務省に入省。エジプトと英国留学、サウジアラビア駐在等を経て、人材・組織コンサルタントに転身。外資系コンサルティング企業3社を経て独立する。専門は企業組織・人材のグローバル化・デジタル化プロジェクト。
また、ビジネスブレークスルー大学と東京工業大学大学院でリーダーシップ論の講義を担当。人材・組織論を中心に20冊余りの著作がある。近著は『破壊的新時代の独習力』(日本経済新聞出版)
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
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明治学院大学 経済学部准教授