激変時代における自己変貌、自己変身のヒントとは
2001年、2007年、2011年、2015年、2020年……21世紀にはいってから、ほぼ5年毎に世界史的な事件や災害や進歩が起きている。順番に、(1)9.11同時多発テロ(2001)、(2)本格的デジタル・ソーシャル革命開始(iPhoneの発売)(2007)、(3)アラブの春・東日本大震災・原発事故(2011)、(4)企業組織・文化のデジタル化開始・SDGs(2015)、(5)新型コロナ世界伝染・経済危機(2020)。
一部はかなり主観的な選択であるにせよ、私たちは今、生存レベルでも、社会レベルでも、経済レベルでも、大きな変化の真っただ中にある。目下の情勢でいえば、やがて「ポスト感染病時代」に入る可能性と共に、「ウィズ(WITH)感染病の時代」が長期間継続する可能性も覚悟すべきかもしれない。いずれにせよ、これまでの諸事件との相乗効果で、民主主義や経済・経営のグローバル化や社会の秩序維持の方式などに根本的な変更を迫るであろう。
他方で、「人」としての私は、この20年間の激変の前にほとんど出来上がっていて、21世紀開始当初は、そのまま逃げ切れるとどこかで思っていた気がする。しかし、全くそうではないことを、ほぼ5年毎にリマインドされている。のどもとすぎれば日常に戻ることは得意であるが、さすがに、ほぼ5年毎に強烈なリマインドを食らえば、いやでも根本的に考え直すことになる。実際、私はこの20年の間に、必要に迫られて大きく考え方や行動を変えてきた。
人生のライフサイクルでいえば、青春、朱夏を経て晩秋をほぼおえ、玄冬に入りかかっている私でさえ、かようなありさまである。読者のほとんどが私より若いことを勘案すると、私以上にギア・チェンジの必要性を感じている人や、実際にチェンジをされた人、チェンジの真っただ中の人もいるに違いない。
そのような想定の下で、このコラムでは、激変時代における自己変貌、自己変身のヒントを紹介したい。もとより、自己変貌の内容やスタイルは多様であるし、多様であるべきだが、私は時代の流れも読みつつ、自分でいろいろ試したり、他の人たちが取り組んでいることも眺めたりしつつ、ある一つの方法に絞って紹介したい。
その方法とは、スモール・ハピネス(Small Happiness小さな幸せ)を創り出したり、見つけたりして、味わう方法である。正確な呼称はスモール・ハピネス・メソッドである。1年に1度だけスモール・ハピネスを味わうのではなくて、毎日一度は味わえるくらい身近にすることを狙っている。
ではそのスモール・ハピネスとは何か。直訳は「小さな幸せ」であり、その幸せなニュアンスは保持しているが、上記の狙いに照らし、その中身をパタン化し、それを得る方法を単純化している。今回、そうした点にもふれながらスモール・ハピネスの内容と具体例を紹介するが、その前に、何のために、スモール・ハピネスを味わおうとするのか、すなわち、スモール・ハピネスを得ることの効用について述べておこう。
第1に、少なくとも毎日一度、ハピネスを感じることは、それ自体よいことだろう。特に、日本はエンゲージメント・サーベイのスコアやハピネスのスコアが低いことで知られている。それだけに、毎日一度、ポジティブな感情、それもハピネスを味わうことには、理屈抜きで価値があるだろう。今の時代ではますますその価値は高まるだろう。
第2に、ハピネスは、ウエル・ビーイング(心身の良好な状態)の重要な要素で、ウエル・ビーイングは、今やパフォーマンスをあげるために重要な要素だと位置付けられている。外資系企業では、チーフ・ハピネス・オフィサーを役職としておくところまででてきている。スモール・ハピネスを積み重ねることで、ウエル・ビーイングが増大し、それがパフォーマンスの増進にもつながることを狙えるだろう。
第3に、今の時代は、自分が生きていることの「意味」が問われている。激変の中で、自分の仕事や役割を失ったり、時代遅れになったり、マシンとの競争の中で人間の意味を考えさせられたり、新型コロナでリモート・ワークをする中でそもそも会社に通う意味があるかと考えたり、…。とにかく意味が問われている。意味とはさまざまな「つながり」の中で見いだされるものであり、この後述べるように、スモール・ハピネスは「つなぐこと」と「つながりの発見」に焦点をあわせているので、「意味」を見いだすことにも直結するだろう。
さて、ここでスモール・ハピネスの内容と事例の紹介に入ろう。
まず、スモール・ハピネスを味わう象徴的な例としてジグソーパズルを取り上げる。ジグソーパズルは、ばらばらのピースを一つの形につなげていくことだが、完成したとき、やったと感じるだろう。この例には、スモール・ハピネスを味わうための重要な2つのポイントが含まれている。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授