第5の習慣 コミュニケーションを行うドラッカーが教える成果をあげる人の8つの習慣(2/2 ページ)

» 2021年02月16日 07時07分 公開
[山下淳一郎ITmedia]
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成功している組織には、愛想が悪く、あえて人を助けようとせず、人づきあいもよくない上司が必ずいる。冷たく、厳しく、不愉快そうでありながら、誰よりも多くの人たちを育成する人がいる。最も好かれている人よりも尊敬を得ている人がいる。自らの部下に厳しくプロの能力を要求する人である。厳しいプロは、高い目標を掲げ、それらを実現することを求める。誰が正しいかではなく、何が正しいかを考える。頭のよさではなく真摯さを大切にする。つまるところ、この資質にかける者は、いかに人好きで人助けがうまく、有能で頭がよくとも、組織にとっては危険な存在であり、上司および紳士として不適格である。

ピーター・ドラッカー

 どんなに頭が良くても、真摯さに欠ける人間は危険だとドラッカーははっきり言っている。たとえ、愛想が悪くても、人づきあいがよくなくても、仕事に対する愚直さ、意思の疎通をする誠実さこそ、コミュニケーションの土台といえる。その土台がなければ、コミュニケーションはあり得ない。

人の上に立つ人のコミュニケーションの在り方

 「超越した存在でなければならず、好き嫌いどころか、仕事のやり方さえ気にしてはならない。唯一の規律は成果と人物である。交友とは両立しない。社内に友人をもち、仕事以外の話をするのでは公正たりえない。少なくとも公正には思われない。害のあることに変わりない。特定の人とだけ飲みに行くというのは論外だ。もちろん孤独、距離、形式が性に合わない者もいる。私もそうだった。しかし、それがつとめだった」

 こう言ったのは、米国の大手自動車メーカー、ゼネラルモーターズの元CEOアルフレッド・スローンだ。彼はトップとして、どの幹部とも同じ距離を置いていた。彼がコミュニケーションで大切にしていたことは、「全員と同じ距離を保ち、全員に同じ態度で接する」ということだった。

 トップが、全員に同じ態度で接するだけで、働く人たちの意欲を保つことができる。逆に、特定の幹部、特定の社員とだけ親しくすれば、そこに誤解や嫉妬が生まれる。あるいはその人に対する警戒が生まれる。生産的な人間関係は保てるはずがない。特定の人とだけ飲みに行くのは言語道断だ。それは、決して「非人間的であれ」ということではない。それが人の上に立つ人のつとめである。それが人の上に立つ人のコミュニケーションの在り方といえる。

お互いの考えの違いを理解する

 実際の業務では、使いもしない膨大なデータを集めている会社は少なくない。システム化された形式的な報告が先行し、仕事に必要な情報を得られていない。その結果、上司、部下、同僚の考えを理解できていないことがある。それでは力を合わせることができない。成果はあがらない。成果をあげるには、何を理解してもらわなければならないのだろうか。

 ドラッカーはこう言っている。

成果をあげるには、アクションプランを理解してもらい、情報ニーズを理解してもらわなければならない。特にアクションプランについては、上司、部下、同僚に示し、意見を聞いておかなければならない。同時に、自分がいかなる情報を必要としているかという情報ニーズについても理解してもらわなければならない。

ピーター・ドラッカー

 所属している部署、行っている仕事、担っている責任、就いている役職が異なれば、意見が違って当然だ。意見の違いは、スキルの問題ではない。コミュニケーションに費やす時間が足りないからだ。お互いの考えを理解することに十分な時間を使っていないだけである。じっくり話し合えば必ず分り合える。

 問題は、話し合いという仕事が、あまりにも単純な事であるがゆえに、それをおろそかにする事だ。技術の発達によってさまざまな通信手段が世に登場し、情報の共有は格段に便利になった。しかし、LINEやメールをはじめ、さまざまなツールでできることは、「情報の共有」であって「意思の疎通」ではない。

 必要なのは、「お互いの考えの違いを理解すること」である。そして、「共通の考えをつくり出すこと」である。成果をあげる人はそれを習慣にしている。

(参考文献:次の書籍の中から一部引用させていただいた。『経営者の条件』『マネジメント』『ドラッカーが教える最強の後継者の育て方』)

著者プロフィール:山下淳一郎 ドラッカー専門の経営チームコンサルタント

ドラッカー専門の経営チームコンサルティングファーム トップマネジメント

東京都渋谷区出身。ドラッカーコンサルティング歴約33年。外資系コンサルティング会社勤務時、企業向けにドラッカーを実践する支援を行う。中小企業の役員と上場企業の役員を経て、ドラッカーの理論に基づいた経営チームをつくるコンサルティングを行う、トップマネジメントを設立。現在は上場企業に「経営チームの研修」「経営幹部育成の研修」「後継者育成の研修」を行っている。 

著書に『ドラッカーが教える最強の後継者の育て方』(同友館)、『ドラッカー5つの質問』(あさ出版)、『新版 ドラッカーが教える最強の経営チームのつくり方 』(同友館)、『日本に来たドラッカー 初来日編』(同友館)、『ドラッカーが教える最強の経営チームのつくり方 』(総合法令出版)、『ドラッカーのセミナー』(Kindle)、『ドラッカーが教える最強の事業承継の進め方』(Kindle)がある。主な連載に『ドラッカーに学ぶ成功する経営チームの作り方』(ITmedia エグゼクティブ)がある。ほか多数。


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