目の前の問題を解決すれば物事はうまくいくと考えてしまうが、それはマイナスの状態をゼロにするにすぎない。プラスの状態を起こすためには、機会に焦点を合わせなければならない。
今回のテーマは、成果をあげる人の第6の習慣「機会に焦点を合わせる」だ。
ある企業でこんなことがあった。その企業の経営チームは、いつも問題の解決に追われていた。ある年、病院向けにある測定器を開発した。その測定器は予想以上に売れ、生産が追い付かなくなった。そして、一般の企業や大学からも多くの注文が入るようになり、生産はさらに追い付かなくなった。うれしい悲鳴だった。
それは新しい機会の兆候だった。しかし経営チームは誰一人として、一般の企業や大学にも売れているという予期せぬ成功に気付かなかった。「狙った市場ではなかったが、そこにより多くの潜在顧客がいる」ということさえ経営チームは認識できなかった。営業マンを一般の企業や大学に行かせることもしなかった。アフターサービスを充実させる施策もしなかった。何年かがたったとき、その市場は競争相手に奪われ、さらに、その競争相手に既存顧客も奪われた。いったい経営チームは何をしていたのだろうか。
一般の企業や大学にも売れたことは大きな機会だった。しかし、その大きな機会に気が付かず、大きな売上を失った。経営チームは日々、今起こっている問題の解決に注意が引っ張られていた。その時起こっている機会に気付けなかった。これでは、どんなに頑張っても成果をあげることはできない。そうならないために、どうすればいいのだろうか。
ドラッカーはこう言っている。
問題ではなく、機会に焦点を合わせることが必要である。もちろん問題を放っておくわけにはいかない。隠しておけというわけではない。しかし問題の処理では、いかにそれが重大なものであろうとも、成果がもたらされるわけではない。損害を防ぐだけである。成果は機会から生れる。
ピーター・ドラッカー
目の前の問題を解決すれば物事はうまくいくと考えてしまう。しかし、それは錯覚だ。問題の解決はマイナスの状態をゼロにするのにすぎない。問題を解決してもプラスの状態が起こるわけではない。だから、機会に焦点を合わせなければならないのだ。
ドラッカーが言うように、問題を放っておくわけにはいかないし、隠しておくわけにもいかない。しかし現実は、起こった問題に圧倒されて機会を見失ってしまう。機会を見失わないようにするために、どうすればいいのだろうか。ドラッカーは「心を入れ替えて頑張ろう」とは言わない。常に具体的なことを教えてくれる。
ドラッカーはこう言っている。
問題に圧倒されて機会を見失うことがあってはならない。ほとんどの組織の月例報告が第一ページに問題を列挙している。しかし、第一ページには機会を列挙し、問題は第二ページとすべきである。よほどの大事件でも起こらないかぎり、問題を検討するのは、機会を分析しその利用の仕方を決めてからにすべきである。
ピーター・ドラッカー
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授