物流の発展段階は黎明期、インフラボーナス期、高度化期、成熟期の4つの発展段階によって大別される。
物流は、「経済の血脈」と称されるだけあって、その市場規模はGDPに準ずる。すなわち、高度経済成長期であれば物流の市場規模も急速に拡大する。対して、日本のように成熟した国では、大きな成長は望めない。
では、GDPに完全に比例するかというと、必ずしもそうではない。GDP以上に成長するときもあれば、下回ることもある。それは、黎明期、インフラボーナス期、高度化期、成熟期の4つの発展段階によって大別される。(図A参照)
1人あたりのGDPが3000USD以下の地域は総じて物流インフラが脆弱である。一般道路はある程度整備されていても、高速道路や鉄道といった幹線輸送の基盤が発達していない。港湾や空港のキャパシティも小さい。
ゆえに、GDPの伸長に応じて物流ニーズが増大しても、インフラの脆弱性がボトルネックとなる。物流市場の成長率はGDPのそれを下回るというわけだ。
1人あたりのGDPが3000USDを超えると、物流インフラへの投資が本格化する。高速道路、鉄道、港湾、空港などの整備が進むことで、より多くのモノを、より遠くに運べるようになる。トラックや倉庫、それを運用する物流会社も加速度的に増加する。
物流市場は、ボトルネックが解消されることで、GDPの成長率以上に拡大する。経済成長における“人口ボーナス期”と同様、かつてない急速な発展を遂げるはずだ。
1人あたりのGDPが6000USDを上回るようになると、物流インフラの整備がニーズの増大に追い付くようになる。需給が均衡することで、物流市場の成長率はGDPと同等になるだろう。
この段階に至ると、温度管理、定時到着、トレーサビリティー、返品処理といった高度な物流機能へのニーズが高まる。「量」だけではなく、「質」へのニーズに対応することが求められるようになるわけだ。
1人あたりのGDPが2万USDを超える地域での物流インフラへの投資は、安全性と効率性を高めるための環境整備が中心となる。GDPのさらなる伸長を望みにくいだけではなく、オペレーションの最適化が進むことで物流市場の成長は次第に鈍化することが予想される。
物流ビジネスを核に、海外での戦略的な事業展開を図ろうとするなら、インフラボーナス期にある地域がターゲットとして最も有望である。特に、これからインフラボーナス期が始まろうとする段階の地域であれば、市場の急速な拡大を期待できる。1人あたりのGDPが3000USD前後であることを基準にターゲットを選定し、適切なタイミングで投資を実行すれば、物流ニーズの増大により応分のリターンを得られるはずだ。
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明治学院大学 経済学部准教授