自分の考えをそのまま伝えても、相手にはなかなか伝わらない。そこがコミュニケーションの難しいところ。上司がスキルとして持っておきたいのが「伝わる技術」。
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「ミスが多くて困る」「人が言ったことを聞いていない」「責任感が弱い」
部下への不満でよく出てくる話です。上司の側からすると、悪いのは部下の方という思いがあるかもしれません。
でも、別の視点から見ると、上司の側が部下とのコミュニケーションで勘違いをしていることもあります。
例えば、上司と部下のこんな会話の場合。
部下 「すごく仕事が大変なんです!」
上司 「それは成長につながるよ。頑張ろう」
言葉ではこう言っていますが、お互いの頭の中では
部下 「忙しすぎてるから言ってるんだけど……」
上司 「これぐらいで泣きごと言うなんて、甘いよ……」
上司からすると大変だろうと忙しかろうと、仕事は責任感をもってやり通すべきものだと思っての言葉かもしれません。
ですが、部下にはそうは届いてはいません。そうなると、このコミュニケーションで生じるのはお互いへの不満です。仕事の現場でよく起きていることかと思います。
自分の考えをそのまま伝えても、相手にはなかなか伝わらない。そこがコミュニケーションの難しいところです。お互いの価値観や立場が違えば、どうしてもコミュニケーションの不一致は生じます。
こういったことをなくすために、上司がスキルとして持っておきたいのが「伝わる技術」です。正しいことでも、伝わる技術がないと、部下には伝わらない、誤解されてしまうということは、よくあります。
例えば、先ほどの部下の「仕事が大変」という悩みには、伝わる技術の一つ「脳内チューニング」を活用します。「脳内チューニング」とは、相手と自分の頭の中にあるイメージとゴールを共有させる作業のこと。
やり方は簡単です。まず、相手とのゴールを共有します。次に「質問」です。楽器のチューニングは音を鳴らしながら行いますが、コミュニケーションのチューニングは「質問」で行っていきます。目的は相手の「脳の中のイメージ」を探ることです。
知り合いの美容師さんからこんな話を聞いたことがあります。
髪を切るときに気を付けないといけないことがあるそうです。それは、「お客さんが持っているイメージと自分が思っているイメージは違う」ということを認識すること。
例えば、「10センチ切ってください」とお客さんに頼まれたとしても、そこで1回考えるそうです。
髪質やうなじの位置などは人それぞれで、お客さん自身も自分の特徴を分かっていない人も多い。そうなると、お客さんが本当に思っているイメージを共有するために、イメージの確認作業をするそうです。これこそが脳内チューニングです。言葉だけでは伝わりにくいときは写真や図などのビジュアルも使いながらイメージを合わせていく。
さきほどの上司と部下の会話の場合はどうでしょうか。
「仕事が大変」ということを脳内チューニングしていきます。もちろん、立場や価値観の違いを完全に一致させることはできません。でも、お互いが「なぜそう思うのか」の理由を知ることはできるはずです。
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明治学院大学 経済学部准教授