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» 2022年03月30日 07時09分 公開

第2回 業務のデジタル化では「YouTuber」を目指せ(2/2 ページ)

[市谷聡啓,ITmedia]
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 今まで「メール」で頑張ってきたところで、いきなり「YouTube」とは面食らうかもしれない。ただし、YouTuberになると言っても何も奇抜な動画を作れるようになれというのではない。YouTuberのようにコミュニケーションを「ライブ」として捉え、乗りこなそうというのが趣旨だ。

 これまではメールにしろファイルにしろ、片方向の伝達を一回一回区切りながらコミュニケーションするスタイルを取ってきた。メールが届いたことを確認し、開いて、本文を読み、添付されていたファイルを落とし、中身を確認する。ファイルに必要なことを記載して、固め直してメールで送り返す。まるで昔ながらの手紙のようだ。一回一回のコミュニケーションが分断的で、完結している。

 要はコミュニケーションとコミュニケーションの間があいていて、連続的ではない。こうしたコミュニケーションのスタイルを「ダウンロード型」と呼んでいる。よっこらしょと手元に落として処置を行うというイメージだ。

 一方、YouTubeのライブとはお互いがつながっており、リアルタイムなコミュニケーションを取ることができる。同じ時間と空間を共有しているため、何らかの発信に対するリアクションが即応的に行われる。そうした反応に対する反応をまたテンポよく重ねる。コミュニケーションのトランスフォーメーションで必要なのも、この感覚だ。

 実際に組織内で使うデジタルツールはSlackやTeamsなどのチャットになる。同じ1時間のやりとりでも、メールに比べて相手との間で共有できる情報の密度に大きな開きが出るだろう。こうしたコミュニケーションスタイルのことを「ストリーム型」と呼んでいる。

 実際のところ、ストリーム型のコミュニケーションで効果を感じられるようになるためには、ツールを使う人間の方にも適応が求められる。使う道具はチャットだが、使う側のスタイルがメールやファイルのような「ダウンロード型」のままだとテンポが遅く、コミュニケーションの密度が低い。

 実際、チャットでありながら、メールのごとき長文を投げてしまう人もいるだろう。もっとコミュニケーションのやりとりにライブ感(臨場感)を持ちたい。ボールの受け渡しをできるだけ早回しでやるようなイメージだ。間違っても重たいボーリングの玉を一球一球投げ込むのではない(長文メールはまさしくボーリングの玉だ)。

 1つコツがある。発信する自分の言葉に全集中するのではなく、むしろ受け取る相手側を想像して投げかけるのだ。メールはこちらから送りつけるPUSH型だが、チャットはあくまで相手が自分のタイミングで受け取りにくるPULL型だ。そうした環境で必要なのは、独りよがりの発信ではなく、あくまで相手の関心とあったメッセージだ。相手が受け取ることができなければ、誰も視聴しない動画よろしくチャットは閑散としていくだろう。

デジタルトランスフォーメーション・ジャーニーの入り口

 テンポの良い「ストリーム型」のコミュニケーションがなぜDXを進めていく上で基礎となるのだろうか。それは、DXの施策がどれもこれも実験的であるからだ。最初から正解が分かっていないということは、その活動とはトライアルになる。

 もちろん、時間をかけてトライアルしているわけにはいかない。早く実験結果を得て、次のトライアルをより適したものにしなければ組織は生き残っていけない。ゆえに、DXでは高頻度な速いトライアルを手掛けられるケイパビリティがとてつもなく重要となるのである。

 繰り返しだが、効率化に最適化してきた組織にはこうした探索と適応の能力が圧倒的に不足している。それはそうだろう、効率化とはいかに試行錯誤せずに最短距離で走り抜けるかが価値の基準なのだから。間違えないようにしっかりと分析と、準備を入念に行った上で取り組みを始める。手戻りがないように踏み固めるように進めていく。そのような仕事にフィットするのは確実にコミュニケーションを進めていく「ダウンロード型」だ。

 今、より求められているのはそこではない。多少の失敗があっても良く、何度も低コストにトライアルできるからこそ分からない中でも進めていけるというスタイルだ。小さな実験によって得られる、小さな学びを高速に連続させていく。さながらストリームのような在り方がデジタルトランスフォーメーション・ジャーニーの入り口となる。

著者プロフィール:市谷 聡啓

株式会社レッドジャーニー 代表 / 元政府CIO補佐官 / DevLOVE オーガナイザー

大学卒業後、プログラマーとしてキャリアをスタートする。国内大手SIerでのプロジェクトマネジメント、大規模インターネットサービスのプロデューサーやアジャイル開発の実践を経て独立。現在は日本のデジタルトランスフォーメーションを推進するレッドジャーニーの代表として、大企業や国、地方企業のDX支援に取り組む。新規事業の創出や組織変革などに伴走し、ともにつくり、課題を乗り越え続けている。訳書に「リーン開発の現場」、おもな著書に「カイゼン・ジャーニー」「正しいものを正しくつくる」「チーム・ジャーニー」「いちばんやさしいアジャイル開発の教本」がある。


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