本当に「仕事ができる」部下を育てようと思ったらビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

「知識やノウハウが豊富」だからといって、仕事ができるけではない。「知識」や「ノウハウ」は仕事をするうえでの必要条件ではあっても、十分条件ではない。では何が重要なのか。

» 2022年11月17日 07時06分 公開
[石川明ITmedia]

 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


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「仕事ができる」とはどういうことか?

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 「あの人は仕事ができる」という言い方があります。

 ビジネスパーソンであれば誰もが、そのような評価を得たいと思っているのではないでしょうか。しかし、「どういう人をもって仕事ができるというのか?」と聞かれると、明確に答えるのは意外と難しいものです。

 それでも、「仕事ができる人になりたい」と願う多くのビジネスパーソンは、本を読み、セミナーを受講し、学校に通って熱心に勉強をしています。オンライン化が進んだことによって、「学び」へのアクセスがより簡単になったことも、勉強熱をますます高めているように見受けられます。

 そして、学者やコンサルタントが考案した思考フレーム、成功や失敗のケーススタディー、経済動向や技術動向といった最新事情、会計やファイナンスの知識、さらには、プレゼン手法や表計算ソフトの使い方といったノウハウなどを貪欲(どんよく)に学んでいます。

 もちろん、これは素晴らしいことです。

 こうした「知識」や「ノウハウ」を仕事に生かすことができれば、より一層成果を出しやすくなるでしょう。仕事における能力を向上させるうえで、「学ぶ」ことは不可欠。その努力を続けることは、非常に立派なことだと思います。

 ただ、豊富な「知識」や「ノウハウ」を身に付けたビジネスパーソンが、会社の中で「仕事ができる」といわれるかというと、必ずしもそうではありません。むしろ下手をすると、「頭でっかちで実務はちょっと……」と思われてしまうこともあるのが現実。それは、私自身、ビジネススクールの教員を10年以上務めてきたなかで感じることでもあります。せっかく努力をしているのに、とてももったいないことです。

 つまり、「知識やノウハウが豊富」だからといって、「仕事ができる」わけではないということ。「知識」や「ノウハウ」は仕事をするうえでの必要条件ではあっても、十分条件ではないということです。

組織の中で仕事で成果を出すために本当に必要な力とは

 では、何が重要なのか?

 ずばり「実行力」です。「知識」や「ノウハウ」を活用しながら、具体的に仕事を前に動かしていく「実行力」こそが決定的に重要なのです。

 私は、仕事とは「誰かの不を解消し、喜んでもらって、その対価をいただくこと」だと考えています。「不」とは不安、不満、不快などの「不」。この「不」を解消して、人々に喜んでもらうことこそが仕事の本質なのです。

 そして、会社員の強みは、会社が有するリソース(ヒト・モノ・カネ)を活用して、世の中の「不」を解消できるということ。会社のリソースを使えるからこそ、1人ではとてもできない「大きな仕事」ができるのです。

 ただし、そのためには条件があります。

 社内の人々を味方につけ、組織を動かすことができなければならないのです。世の中の「不」を解消する素晴らしい事業企画があったとしても、それを組織の中で認めてもらえなければ仕事は始まりません。

 あるいは、事業企画が承認されたとしても、社内の人々や関係部署、経営陣の感情的な共感が得られていない場合、その後サポートを得られないばかりか、さまざまな抵抗に見舞われるなどして、その事業は頓挫してしまうでしょう。

 仕事を「実行」し、「結果」を出すためには、人と組織を動かすことから絶対に逃げることはできないのです。

 しかし、これが難しい。

 人や組織は、理屈だけでは割り切れない複雑な存在です。人はいつも合理的に判断や行動をするわけではありませんし、さまざまな要因で気持ちは揺れ動きます。経営陣、上司、部下など社内の人々を味方につけるためには、そうした「人間心理」への鋭い感性が求められます。

 そして、そんな「人」が集まってできている組織は、さらに複雑な力学のもとに動いています。同じ会社内であっても部署ごとに利害は異なり、ときには対立関係に陥ることもあります。あるいは、「社内政治」と呼ばれるような力関係の中で翻弄(ほんろう)されることもあるでしょう。「組織力学」に対する深い洞察がなければ、組織を動かすどころか、組織に押しつぶされてしまうのです。

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