玄関先に不審な置き石、コロコロ60件のミステリー 多様化する空き巣狙いのマーキングか

門扉の上にこれまでなかったはずの小石。それは犯罪の印かもしれない―。

» 2025年06月20日 10時53分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 門扉の上にこれまでなかったはずの小石。それは犯罪の印かもしれない―。神戸市垂水区の住宅街で今年1月以降、玄関先などに不審な石が相次いで置かれていたことがわかった。5月にはこの住宅街にある住宅1軒に侵入したとして男2人が逮捕。住宅の敷地内には小石が置かれており、兵庫県警は住人が留守かどうかを確認する「置き石マーキング」だったとみて、多発していた置き石との関連を調べている。専門家はマーキングの手口は多岐にわたるとして防犯対策の徹底を呼びかけている。

門扉に置かれた小石のイメージ写真=神戸市

60件の置き石……住宅街で不安募る

 「若い男2人がインターホンを鳴らして、門扉を勝手に開けようとしている」。1月、神戸市垂水区に住む女性から110番があった。女性は通報後、門扉の上やガレージ付近に1〜3センチの小石が置かれているのを見つけた。

 通報を受けて県警が周囲を捜索したところ、不審な小石は他の住宅でも発見された。その数、60件以上。いずれも目立ちにくい1〜3センチの小石で、門扉などの開閉により「動かすと落ちやすい場所」に置かれているという共通点があった。

 一体誰が……。住民らの間で不安が募る中、事態が動いたのは5月だった。兵庫県警は同28日、邸宅侵入と器物損壊の疑いで、いずれも住所不定、無職の嶋谷直人(28)、中村啓太(28)の両容疑者を逮捕した。

 2人の逮捕容疑は、共謀して今年2月、同区神陵台の住宅敷地内に侵入。1階窓ガラスを損壊したとしている。住宅の窓ガラスが割られた直後、侵入警報装置が作動して発覚。捜査関係者によると、住宅の敷地内には1〜3センチの小石が置かれており、2人は玄関付近の門扉などに石を置き、留守を確認するという手口で周辺を物色していたとみられる。

 住宅街では男らの逮捕に安堵(あんど)しつつも、不安の声が聞かれた。80代女性は「ニュースをみてとても驚いた。門扉の上に小石が置かれていたとしても、カラスの仕業かなと思って見過ごしてしまう。知らない間に標的になってしまっているなんてとても怖い」と声を落とした。

小石以外にも〇や×印……

 専門家などによると、置き石マーキングは、動かすと落ちやすい門扉などに石を置き、留守宅かどうかを判断する手法。昔から空き巣犯が使う手口だ。ほかにも、窃盗犯同士がやりとりするための暗号の可能性も考えられる。

 こうしたマーキングは、小石に限らない。草を門扉に挟む手法のほか、小さな〇印や×印をインターホン付近に書き込む、駐車中の車の後輪の上に小石を置き、車の動きを確認する―といった方法もあり、警戒が必要だ。

 警察庁によると、住居侵入窃盗の認知件数は、平成15年の19万473件をピークに減少傾向にあったが、令和4年が1万5692件だったのに対し、5年は1万7469件と11.3%増えた。全国的にみると、住居へ侵入する手口の窃盗事件は1日当たり約48件発生している。

 関西国際大の中山誠教授(犯罪心理学)は「まさか自分が狙われるとは思わなかった」と話す被害者も少なくないとし、「自分ごとと捉え、できる防犯対策を徹底してほしい」と注意を呼びかける。

「防犯意識高い家」に

 中山氏によると、窃盗犯に狙われないため大切なのは、犯人側に「防犯意識が高い家である」と認識させることだという。犯人は侵入に5分以上かかりそうだと思うと諦める傾向にあり、防犯意識が高そうな家は基本的には標的から外す。

 ではどんな対策を取ればよいのか。具体的には、玄関に人感センサー付きの屋外ライトや防犯カメラを設置する▽防犯ステッカーを貼る▽庭など家の周りの手入れを行う―などの対策が有効だ。「防犯カメラはダミーであっても構わない」(中山氏)。

 また、多様化するマーキングの方法に住人が気づけるよう家の周囲を注意深く見る癖をつけることも必要だ。ガラスを割って侵入される事例も多いため強化ガラス保護フィルムの貼付や、音が鳴るよう加工された「防犯砂利」の敷設、補助錠の取り付け(ワンドア・ツーロック)なども効果的とされる。

 近年では闇バイトに関連する緊縛強盗事件など、金品を狙った凶悪事件も発生している。中山氏は「自身や家族の身を守るためには、今一度、自宅の防犯対策を見直すことが不可欠だ」と強調した。

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