パナソニックHD 米カンザスのEV電池工場が量産開始 テスラ不振で不透明感ぬぐえず

パナソニックホールディングス(HD)は14日、米カンザス州に新設した電気自動車(EV)向け電池の新工場で量産を開始したと発表した。ネバダ州に続き、米国で2番目の生産拠点。

» 2025年07月16日 08時55分 公開
[産経新聞]
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 パナソニックホールディングス(HD)は14日、米カンザス州に新設した電気自動車(EV)向け電池の新工場で量産を開始したと発表した。ネバダ州に続き、米国で2番目の生産拠点。最大顧客の米EV大手テスラの販売不振などを背景に、2026年度末としていたフル生産への移行は事実上延期した。専門家は「テスラ以外の電池供給先を増やし、市場の変化に対応する必要がある」としている。

電気自動車(EV)向け電池の量産を開始したパナソニックホールディングスの米カンザス工場(同社提供)

 カンザス工場は、パナソニックHDが約40億ドル(約5900億円)を投じて新設。約120万平方メートルの敷地で最大4千人が働く。同社はフル生産の時期について「顧客の要望や環境の変化を踏まえて柔軟に対応をしていく」として「未定」に変更。事実上の延期とみられる。

 背景にはEV市場の成長鈍化がある。同工場の最大の電池供給先として想定するテスラは25年4〜6月の世界販売台数が前年同期から約13%減の38万4122台と大きく低迷。テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は最近、トランプ大統領と財政政策などを巡り対立を深めており、EV市場以上にテスラの先行きは不透明感を増している。

 ただ、パナソニックHDが多額の投資をして進めてきた米国での工場建設は現在、大きな利益をもたらしている。バイデン前政権下で成立したインフレ抑制法(IRA)によって米国で生産するEV電池が補助金の対象となり、同社の25年3月期連結決算で純利益を1216億円押し上げた。

 カンザス工場の稼働によって26年3月期はさらにプラスの影響が見込まれる。トランプ政権下でIRAによるEV購入時の補助は廃止となる予定だが、電池生産については継続される見込みだ。

 しかし、補助金を除くと同社のEV電池事業は赤字が続いている。国内では20年代後半からスバルやマツダに電池を供給する予定で、国内外の工場稼働率を上げ、早期の黒字化を目指す。早稲田大大学院の長内厚教授(経営学)は「補助金をうまく活用できたことは良かったが、テスラに依存している状況ではリスクがある。供給先を増やし、今は市場の変化に耐えることが重要だ」としている。(桑島浩任)

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