トランプ米政権による関税措置の長期化で、自動車部品メーカーが危機感を強めている。悪影響の拡大によって米国で完成車を販売する発注元の自動車メーカーから、コスト削減や減産を迫られる恐れがあるためだ。
トランプ米政権による関税措置の長期化で、自動車部品メーカーが危機感を強めている。悪影響の拡大によって米国で完成車を販売する発注元の自動車メーカーから、コスト削減や減産を迫られる恐れがあるためだ。関税負担を軽減するためにサプライチェーン(供給網)が見直され、調達先を現地メーカーなどに変更される懸念もある。一部では影響が顕在化しており、発注元の動向に戦々恐々としている。
「サプライチェーンは米国の(完成車メーカーの)現況が非常に影響する。必要な対策は躊躇なく行わなければならない」。武藤容治経済産業相は15日の閣議後記者会見で、供給網を構成する自動車部品メーカーへの影響拡大を懸念した。
同日には日産自動車が主力工場である追浜工場(神奈川県)などの生産終了と九州の子会社への生産移管を発表。トランプ関税が追い打ちをかけたとされ、部品メーカーは移転や取引先の変更といった難しい判断を迫られる。
「新型コロナ禍のときと同じように週休4日などの対応が必要になるかもしれない」。米国に輸出する完成車用の部品を供給している静岡県内のメーカー幹部は悲観的だ。現時点では完成車メーカーが関税負担を吸収しており、販売減によるコスト削減や減産の要請は受けていないという。だが、先行きについて好材料はなく、発注元からも見通しが示されず焦りは募る。
実際に多くの部品メーカーが工場を構える三重県では、県の聞き取りに「発注量が1割減った」とする声も上がっているという。
財務省の貿易統計によると、自動車部品は2024年の対米輸出額が約1兆2000億円に上り、品目別で首位の完成車(約6兆円)に次ぐ規模だ。米国は主要な貿易相手国であり、完成車に組み込まれた“間接輸出分”の部品を考えれば、対米輸出品の主力と言える。
ただ、裾野が広い自動車産業の下流の下請けになるほど、トランプ関税のしわ寄せは大きくなってくる。
米国で日本の自動車メーカーが関税負担を販売価格に転嫁できなければ今後、下請けに供給部品の原価を抑えるよう求める可能性もある。体力がなく金融機関から融資を受けづらい3次、4次下請けなどには厳しい。それだけでなく、値上げで売り上げが悪化すれば、完成車メーカーは減産を余儀なくされ、より直接的に下請けが悪影響をこうむる。
さらに憂慮されるのが供給網の見直しだ。
今回の関税では完成車への追加関税25%のほか、エンジンなどの主要部品を輸出する場合も25%が課されるが、部品への関税の回避策として、北中米3カ国の自由貿易協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」を活用する動きが強まっている。部品を構成する素材の75%以上を域内原産とするなど一定条件を満たせば、当面は追加関税の対象外となったためだ。
品質の高さなどから日本から部品を調達する海外の自動車メーカーもあるが、協定の条件を満たすには日本製部品の比率は減らさざるを得ない。日本貿易振興機構(ジェトロ)の担当者は「すでに米自動車大手などはUSMCA域内での調達体制を組んでいる」と指摘する。
国内部品メーカーで米国進出などが可能な企業は限られていることから「値上げをしても負けない高付加価値品をつくることが重要だ」としている。(福田涼太郎)
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