日本メーカーの象徴だった「高性能」からはあえて距離を置き、頼りなさを魅力にファンを獲得している。
パナソニック、シャープ、カシオ計算機など電機大手各社が人に癒やしを与える家庭用の“弱いロボット”を続々と発売している。日本メーカーの象徴だった「高性能」からはあえて距離を置き、頼りなさを魅力にファンを獲得している。
パナソニックの「ニコボ」は、「永遠の2歳児」をコンセプトに癒やし特化のロボットとして2023年5月に発売された。人の代わりに作業をしてくれるわけでもなく、便利な機能も搭載しないが、片言の日本語を話したり、急におならをしたりして和ませてくれる。思わず手助けしたくなる弱々しさが人の優しさを引き出すという。
丸いボディーに尻尾が付いた独特の形状で、全長約20センチ、重さ約1.5キロ。本体価格は6万500円。新しい言葉を覚えたり、ニコボを成長させたりするには月額1100円のプランに加入する必要がある。
シャープは今年8月、対話型人工知能(AI)を搭載したロボット「ポケとも」を発表した。ミーアキャットをモチーフにしたかわいらしいデザインで、全長約12センチ、重さ約200グラムの手乗りサイズとなっている。
マイクとカメラで交わした会話や訪れた場所を記憶し、ユーザーごとに個性を持ったパートナーに成長していく。ロボットがそばにいないときもスマートフォンアプリで会話でき、その内容も記憶される。販売価格は3万9600円、アプリは月額495円で、いずれも11月から提供を開始する。
よりペットとしての側面が強いのがカシオの「モフリン」だ。名前の通りもふもふした見た目で重さ260グラムの手のひらサイズ。よく話しかける人を飼い主と認識し、育て方によってしぐさや感情表現が変化する。独自開発のAIによって個性は400万通り以上になるという。価格は5万9400円。昨年11月に発売すると初回分の1千台が1週間で完売した。
ロボットやAIに癒やしを求めるのは日本だけではない。米オープンAIが8月に「チャットGPT」の最新モデル「GPT−5」をリリースしたところ、前モデルと比べて会話が無機質になったとして世界中のユーザーから苦情が殺到。同社は前モデルを有料プラン向けに復活させる対応をとった。性能の向上よりも人間らしいコミュニケーションを重視するユーザーが一定数いるようだ。
近畿大情報学部の越智洋司准教授(教育情報工学)は「人に似すぎず、あえて弱さや単純さを残すことで、人が心地よく感情移入できる」と説明。AIによってロボットはより賢くなる可能性があるが、越智氏は「単なる高性能化ではなく、温かさや安心、笑顔をもたらす存在であることが重要になる」と話した。(桑島浩任)
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