戸数が多く配達に時間のかかるタワーマンションなど大型集合住宅で、専属スタッフやロボットが館内での個別配達を代行するサービスの導入に向けた動きが進んでいる。
戸数が多く配達に時間のかかるタワーマンションなど大型集合住宅で、専属スタッフやロボットが館内での個別配達を代行するサービスの導入に向けた動きが進んでいる。住民の合意形成やコストなど課題はあるが、物流業界で慢性化する人手不足への対応や、多様化する荷物の受け取りニーズなどに応える新たな手立てとして注目されている。
都市部や再開発エリアではタワマンなど大規模マンションが増加。取り扱う荷物の数自体も増え「軽い荷物は宅配ボックス、重い荷物は玄関先まで届けてほしい」などと受け取り方法のニーズも多様化している。
セキュリティーが強固で戸数の多いタワマンで玄関先まで荷物と届けるには、ドライバーは管理人から毎回専用の鍵を受け取ってから個別に配達するなど時間を要する。トラックの駐車時間が長引けば、駐車スペースがふさがって他の運送業者の配達にも影響する。
こうした課題を踏まえ、佐川急便のグループ会社、ワールドサプライ(東京都江東区)では、2023年、東京都中央区勝どきのタワーマンション(約2500戸)で館内配送代行サービスを始めた。
マンションの入り口にスタッフが滞在し、佐川急便やヤマト運輸といった運送業者から住人に届いた荷物を受け取ってまとめ、代わりに住人宅に配る。1日に届く荷物は多い日で1200個にのぼり、1日あたり約10人のスタッフで対応している。手数料は運送業者とマンションの管理組合などから受け取る。
ワールドサプライの担当者は「効率が上がるだけでなく、住人から『同じ人が荷物を届けてくれるので安心』という声がある」と手応えを語る。ただ、導入すれば管理費が値上がりするので「住民の合意形成が必要で新築物件でないと導入は難しい」とも明かす。
一方、ヤマト運輸では8月に千葉県浦安市でマンションの各部屋に自動配送ロボットが荷物を届ける実証実験を開始した。ロボットが専用の宅配ボックスから荷物を受け取り、玄関まで自動配送する。対面配送と玄関前に届ける置き配ができ、居住者は受け取り方法や時間帯を指定できる。
自動配送ロボットを使えば、深夜や早朝の配送も可能と区でも実証実験し、26年の実用化を目指している。
置き配をめぐっては、ドライバーに負担のかかる再配達を減らすため、国土交通省で置き配の利用拡大を踏まえた法整備について物流業界を交えて議論しており、今秋までに方向性をまとめる。物流業界で人手不足が深刻化する中、再配達を減らして負担を軽減する取り組みが官民で加速してきた。(織田淳嗣)
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