勝てる会社は社員が強みを共有している――任天堂に学ぶ問われるコーチング力(1/2 ページ)

組織の遂行力を高めるためには「ビジョン」「価値観」「ミッション(強み)」の共有が重要である。企業が常に勝ち続けるためには、とりわけ価値観とミッションの連携が不可欠だという。

» 2008年10月15日 07時30分 公開
[細川馨(ビジネスコーチ),ITmedia]

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 前回前々回とビジネスコーチングモデルの主要テーマである「ビジョン」、「価値観」について話した。今回は「ミッション」について述べたい。

 「ミッション」とは、一般に任務や使命のことをいうが、ビジネスコーチングモデルにおける組織のミッションとは、「何を持って同業他社に勝つか」「この組織だからこそできるもの」といった会社の特徴や強みを指す。

 一般的に多くの会社ではミッションをオフィスに掲げたり、Webサイトに掲載したりしている。しかしながら、いざフタを開けてみると、メンバーには驚くほど浸透していなかったというケースがよくある。その理由としては、次の2つが考えられる。


 (1)組織のミッションについてメンバーと話をする機会がない

 リーダーは部下に対して組織のミッションを発信し続けるという重大な責務を負っている。しかし、多くのリーダーは売り上げやさまざまな期日に追われている結果、責務を十分果たし切れていない。それどころか、リーダー自身が組織のミッションをきちんと理解しておらず、そのために説明できないということもある。

 (2)メンバーが組織のミッションに共感していない

 どんなに完璧なミッションであっても、メンバーが共感し、実現に向けてモチベーションを高めることができなければ意味がない。そのためには、メンバーの思いや意見が組織のミッションに反映されていることが不可欠である。


 リーダーは、自分が決めたミッションを、組織のミッションとしてメンバーに押しつけるのではなく、メンバー全員でミッションについて考え、議論する機会を設ける必要がある。

全員が納得するミッションを

 メンバーに浸透した組織のミッションを作り上げるためには、次の2点を切り口にしてほしい。

 (1)社会に対する使命

 (2)顧客に対する使命


 組織のミッションを明確にするためには、「質問する→紙に書かせる→発表する→議論する」というプロセスを踏むと、全員が納得したミッションを作り上げることができる。ミッションは価値観とともに土台になる部分なので、時間を十分にかけて議論することが大切だ。その議論のプロセスを通して、組織の一体感が生まれてくるのである。

 このように、組織のミッションを作り強みが明確になれば、より長所を伸ばしていけばいい。ただし気を付けたいのは、長所だけを伸ばしても駄目だということである。米証券会社のLehman Brothersは、不動産関係の取引で強みを発揮し業績を伸ばした。しかし、それだけに注力していたため、サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)の問題が表面化したときには、持ちこたえられずに破たんに追い込まれた。

 ミッションを打ち出して強みを発揮すれば、会社は一時的に勝つかもしれないが、勝ち続けることはできない。大切なのは価値観とのバランスをとることだ。ミッションと価値観の連携が必要である。

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