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» 2010年11月01日 08時00分 UPDATE

女流コンサルタント、アジアを歩く:アジアの新興勢力バングラデシュは世界への扉 (1/4)

わたしは「アジア新興国」と呼ばれる各国を単独でまわり、現地のリアルな状況を把握すべく、さまざまな産業の企業を訪問している。日本にいると、「アジア新興国」と一括りで考えてしまいがちだが、各国の各産業を生で見てみると、それぞれ状況は異なる。

[辻 佳子(デロイト トーマツ コンサルティング),ITmedia]
joryu1.jpg デパート ボシュンドラ・シティ

 日本経済が行き詰まりを見せる中、成長著しいアジア新興国への関心が高まっている。だが、アジア新興国と一言でまとめることはできず、日々、その勢力図は変化している。本稿では、アジア新興国の中の新興勢力とも言うべきバングラデシュ、特にその衣料品産業を通して、日本がアジア新興国をどのように捉えるべきかを伝える。

 現在、わたしは「アジア新興国」と呼ばれる各国を単独でまわり、現地のリアルな状況を把握すべく、さまざまな産業の企業を訪問している。日本にいると、「アジア新興国」と一括りで考えてしまいがちだが、各国の各産業を生で見てみると、それぞれ状況は異なる。そして、その状況は変化し続けている。これまでの先入観や偏見を捨て去り、実状を理解しなければ、アジア新興国とのビジネスを考えることはできない。

 バングラデシュという国名を聞いて、何を思い浮かべるだろうか。世界最貧国、難民問題、雇用問題、サイクロン被害といった、多くのネガティブな言葉が頭に浮かぶことだろう。だが、それはもはや過去の言葉になっている。バングラデシュは、アジア新興国の中の新興勢力として力強く成長し、独自の地位を築いている。

中国メーカーを凌ぐバングラデシュメーカーの出現

 2009年7月、中国ビジネスを調査することを目的に、わたしは、プライベートの時間を使って、香港に本社拠点を置く貿易流通の某大手専門商社を訪問した。この企業は、長年に渡って、中国で調達した商品を世界に輸出するビジネスを営んできたが、現在では、中国のみならず、近隣アジア諸国のサプライヤー企業と、それを求める欧米のバイヤー企業を仲介するビジネスを営んでいる。

joryu2.jpg 工場を訪れたときの様子

 わたしがこの某大手専門商社を訪問した時にも大きな商談が進められていた。アルゼンチンの大手小売企業が男性向けと子供向けのニット製品の買い付けに訪れており、中国とバングラデシュのサプライヤー企業が競い合っていた。サプライヤー企業は、この大手専門商社から別々の部屋を用意され、そこで個別に商品のプレゼンテーションや価格交渉が行われた。アルゼンチンのバイヤー企業と大手専門商社の担当者が、各部屋を頻繁に行き来し、かなり熱っぽい交渉が行われている様子であった。その結果、アルゼンチンの大手小売企業は、バングラデシュのサプライヤー企業と契約することとなった。

joryu3.jpg

 商談成立後、アルゼンチンの大手小売企業に尋ねたところ、バングラデシュのサプライヤー企業の商品は、品質・デザインともに優れており、なおかつ、価格においても中国のサプライヤー企業を下回っていたため、決したとのことであった。具体的には、大手専門商社の仲介料や物流コストも含めて、Wool Touch素材のセーターが1PeaceUS$6.9であった。これに対し、中国のサプライヤー企業は、US$9.3-US$9.7であった。

 中国では急激な経済発展から人件費が高騰しており、バングラデシュのサプライヤー企業のほうが価格競争力を有することは、謂わば、当然である。しかし、特筆すべきは、品質・デザインともに中国企業に劣らない優れた商品を製造・提供しており、グローバル取引におけるタフな交渉の末に、このビジネス機会を勝ち取っていることである。

 日本人にはあまり馴染みのないバングラデシュという国の企業が、中国企業を凌ぎ、グローバルビジネスの世界で飛躍しようとしている。バングラデシュとは、いったいどんな国なのか。そして、そこではどのように産業が育まれているのか。その点を整理してみよう。

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