震災後日本の企業経営はこう変わる、先取りしよう生き残れない経営(1/2 ページ)

東日本大震災・福島原発事故による被災からの立ち直りは、単なる震災「復興」でなく、震災を契機にこれからの新しい日本を創るという意味で震災「創成」というコンセプトに立つべきである。

» 2011年06月13日 07時00分 公開
[増岡直二郎(nao IT研究所),ITmedia]

 東日本大震災・福島原発事故による被災からの立ち直りは、単なる震災「復興」でなく、震災を契機にこれからの新しい日本を創るという意味で震災「創成」というコンセプトに立つべきである。あたかも、第2次世界大戦敗戦をキッカケに日本が民主主義国家に生まれ変わったように、あるいは関東大震災後の耐震耐火建築物「青山同潤会アパート」がキッカケで今のマンションが生まれ、石油危機で「無印良品」、「シェア」が誕生したように。

 その新しい創成日本での企業経営を、先取りしなければならない。新日本で予想される経営像を検討するには、震災で表面化した問題を整理し、創成日本を予想する必要がある。

 まず、「震災創成」を一つの事業として捉え、戦略ストーリーを描く必要がある(前回掲載の「震災/原発対策に戦略がない、では戦略とは?」参照)。

 被災地域を日本積年の問題を抜本解決する尖兵と捉え、この機会に日本を根本変革する「震災創成」をコンセプトとする。ここに、 過去の日本や他国との「違い」がある。

 ストーリーとして、国土の脆弱性・産業の偏在・サプライチェーンの歪み・エネルギーの不安定さなど産業・インフラに関する矛盾の解決が、都市集中による地方軽視・教育や就業機会の欠陥などという政治・社会の改革に影響し、それが例えば高齢化の進展と、農畜水産業の閉鎖性と脆弱性との関連打開を促す遠因にもなる。そして、震災地域の創成がモデルとなって全国波及する。こうして、ここにシンセシスを支える因果論理が存在する。

 まず、創成に当たっての基盤となる考え方だが、第1に創成を指揮担当する部署として、特定省庁に偏らない省クラスの「横断的組織」を設置し、その機能は単に各省や組織間の調整でなく(設置されても、そうなる予感が強くする。だからここでわざわざ断っている)、創成に関する全権限を持ち、実力者が配置されるべきだ。

 第2に震災地域を「特区」とし、規制改革・優遇税制など制度刷新で支援し、民間企業の投資を呼び込み、成功を全国へ波及させること、第3に10兆円以上の「財源の確保」が必要で、マニフェストの見直しや、法的に増税による償還財源を担保した国債発行が必要だ。第4に、右肩上がりの日本経済を前提に復興して批判されている奥尻島や神戸の反省を生かすことだ。

 さて、震災であらわになった問題点指摘と創成案提言である。

 1、「問題」の第1は、液状化と津波などで居住・産業・交通が崩壊、大地震と大津波に対して「脆弱な国土」が表面化したこと。「創成」案は、居住・産業・交通などインフラの立地条件や堤防など防災施設の総点検と再構築、今後の「国土計画の抜本見直し」だ。

 これには膨大な資金と時間を要するが、地震多発列島日本には避けて通れない宿命だ。

 2、「問題」の第2は、日本の産業は自動車・電機・電子部品などに偏り、今回の打撃で輸出が激激したという「産業構造の偏在」だ。「創成」案は、「産業構造の転換」だ。水関連・鉄道などのインフラ、環境、医療、省電力製品/システム、サービスなど新規柱で経済を牽引する多分野構造へ転換し、輸出・国内需要喚起で経済活性化・雇用確保をすることだ。

 その先端技術開発のため、「スーパーエンジニアリングシティ」(世界第一級の研究開発機関を設立し、人材も世界第一線級を集め、世界の技術をリードする)を設置し、企業はこれに資金・人材面で積極参加し、利活用していくべきだ。さらにTPP強力推進で、産業・農業構造改革、輸出競争力強化を図ることが必須だ。

 3、「問題」の第3は、「サプライチェーンの寸断」で産業が機能不全に陥り、その重要性に気付いた。特に3次以降部品メーカーの影響が大きい。「創成」案は、「サプライチェーンの抜本的見直しと確立」だ。(1)事業継続性の高いサプライチェーン構築のため、災害・事故の際の十分な予防と事後対策、(2) 3次以降部品メーカー(いわゆる又請、又々請企業)まで配慮し、サプライチェーンのすべてで部品の流れを把握できるシステムを構築(IT活用)、(3)メーカー間で部品の大々的共通化(製品特徴が課題になる) 

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