日本人の流儀――百年塾の目指すものビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

百年先を見据えて、いま心に植えることができる想いは何なのかを、仲間たちとともに謙虚に真剣に考えていきたい。

» 2012年09月06日 08時00分 公開
[高野 登,ITmedia]
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「リッツ・カールトンと日本人の流儀」

 2009年9月30日。わたしは生まれ故郷である長野市の市長選挙に立候補するため、20年間在籍したリッツ・カールトンを退社しました。退社2日後に出馬表明の記者会見、そして3週間後が投票日という慌ただしさでした。現職市長と民主党が推す新人候補との三つ巴の戦いになりましたが、正直、時間との闘いであった3週間でした。結果は現職に651票差に迫るも惜敗。思えば無謀な挑戦ではありました。しかし、敗戦で失ったものよりも、地元で頑張っている、共感できる仲間達との出会いが、その後、大きな財産として残ることとなりました。

 選挙後に、「リッツ・カールトンを辞めて、後悔はしませんか?」という質問をたびたび受けました。わたしが人生をかけてきた大好きなホテルです。もちろん今でも「未練」は残ります。しかし「後悔」はありません。自分が与えられたホテルという舞台で、常に全力を出し切ってきたという自負があるからです。

 選挙に出る決心をした際に、わたしが心の支えにした、米国第26代大統領ルーズベルトのこんな言葉があります。ボクシングの試合に例えてこう言っています。

 「勇気をもってリングに立った人間。その顔は埃と汗と血で台無しになっており、勇敢に奮闘し、何度も何度もパンチが命中せず、しかし打ち込む情熱と専念を知り、そして素晴らしい目標に向かって身を注ぐ。最後には、良ければ成果として勝利を享受し、悪ければ敗北に甘んずるが、少なくともそれは奮闘した戦士の敗北だ。リングに立った者は、情熱も無く小心で、勝利も敗北も知らない者とは一線を画す。」

 つまり、リングに上がらなければ勝者にも敗者にもなれない。わたしの心を強烈に揺り動かした言葉でした。

 さて、選挙から半年後の2010年の夏。選挙事務所にボランティアで来てくれていた地元の若者達の要請を受けて、「善光寺百年塾」という学びの場を開講しました。いわゆる研修やセミナーとは違い、参加者同士が学びを通じてつながり合うという、コミュニティづくりを目指すものです。

 信州善光寺は一光三尊阿弥陀如来様を御本尊とし、創建以来約1400年の長きにわたり、阿弥陀如来様との結縁の場として、人々の心の拠り所として深い信仰を得ています。1400年続く善光寺さんの地元で一日一日を大切にし、その延長線上で百年先を見据えて、今をいかに生きるかを考える機会をみんなでつくるために始めたものです。

 参加者は20代から60代、学生から主婦、地元の会社経営者から行政関係者までさまざまです。肩書や職業には一切影響されない場。受け身的に勉強するのではなく、積極的に関わり考える場、感じる場です。それぞれが暮らす地域社会で「自分がどうありたいのか」を考え、新たな共感コミュニティをつくり、つなげていく場です。最近では、東京はじめ岡山、名古屋、静岡などからも参加者が集い、広範囲にわたってコミュニティとしてのつながりが出来つつあります。

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