米平和部隊のCIOエド・アンダーソン氏が着任する前、部隊のCIOは7年間で5人交代した。93のITプロジェクトが進行中だった。4年という長期に及ぶものもあれば、着手して4日しか経っていないものもあった。みな離職したスタッフが計画したものだ。
米平和部隊のCIOエド・アンダーソン氏は、部隊に合流した瞬間から、時計の針を横目に見ながらすべてのことをやり遂げなければならなかった。5年ルール以前に、アンダーソン氏もほかの職員同様、30カ月のツアーをベースにした雇用契約を結んだ。
再契約の可否は上司の判断にゆだねられている。従って、部隊がアンダーソン氏を必要不可欠な人材と評価した場合(サードツアーの契約が可能。まれなケースとして、さらに1年単位で再契約できる)を除き、2008年10月には離職しなければならない。
2003年秋にアンダーソン氏が着任する前、部隊のCIOは7年間で5人交代した。彼らの多くは、特定の重要プロジェクトに注力した。確かにそれらのプロジェクトは極めて重要なものだった。例えば、アンダーソン氏の直前のCIOは、部隊創立30年にして初めて正式に会計決算できるシステムを整備した。
しかし、在任期間の短いCIOたちが特定のタスクに集中したため、全体的なIT戦略は停滞した。アンダーソン氏が任務に就いた時、部隊の理事長であるガディ・バスキーズ氏は、夢は“統合された”部隊にすること、とアンダーソン氏に語ったという。
それはほとんど実現困難に思えた。部隊は70もの現地事務所を抱え、それぞれの地域のインフラに左右されるものの、本部との通信はなんとか保っているという状態だ。事務所同士では、まったく通信できなかったのである。
「だれも事務所間で連絡を取り合うことなど考えもしなかった」と、アンダーソン氏。もちろん、インターネットを利用して電子メールやファイルをやり取りすることは可能だったが、ボランティアの健康状態や現地の治安、セキュリティポリシーなど、センシティブな情報を共有できる信頼性の高いネットワークはなかった。
もう1つ課題があった。アンダーソン氏の着任当時、93のITプロジェクトが進行中だった。4年という長期に及ぶものもあれば、着手して4日しか経っていないものもあった。それらの多くは、すでに離職したスタッフによって計画されたもので、各プロジェクトの重要性は、もはやはっきりとはしていなかった。
アンダーソン氏はがくぜんとした。それらのプロジェクトが「いつ開始し、いつ終了するのか、どのような成果があるのか、まったく分からなかった」(同氏)からだ。
そこで、アンダーソン氏は部隊内を歩き回り、誰がどのプロジェクトを必要としているのかチェックして回った。そうして得た情報を分析したところ、本当に必要なプロジェクトはせいぜい20件にすぎないことが判明した。それを受けて、プロジェクトの優先順位を決定するためのシステムをセットアップした。
それまで「IT部門には何のプロセスもなかった。まさに御用聞きのメンタリティだった」とアンダーソン氏。現在は評価委員会が、提案されたプロジェクトを詳細に検討し、部隊の目標に合致するか厳しくチェックする仕組みになっている。プロジェクトが承認されたら、評価委員会が最適な技術ソリューションを推奨するという流れだ。
アンダーソン氏はまた、小さな、しかし重要な変更も行った。スタッフに対して、共有ファイルに英数字ネーミングシステムを利用するように徹底したのだ。これにより、認証されたしかるべき担当者が部隊のデータベースで情報を検索することが容易になった。
アンダーソン氏は、こうして自分が投資したプロセスが将来任務に就くスタッフの活動基盤になると考えている。「われわれの種目はマラソンだ。短距離レースではない。スタッフが全員いなくなった後も生き残るソリューションを構築しなければならない」とアンダーソン氏は語る。
※本稿の内容は2007年2月時点となる。
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明治学院大学 経済学部准教授